令和8年熊本地震で被災された皆さまへ

このたびの地震で被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。事業の再建に使える補助金・融資の解説をまとめました。

新事業進出補助金の対象外は?建てて貸す・介護施設・事前着工の判断【熊本】

「施設を建てて貸すだけでも使えますか」「役員しかいない会社でも申請できますか」。新事業進出補助金のご相談では、計画の中身より先に、そもそも対象になるのかを聞かれることがいちばん多くあります。この記事では、熊本で建物や設備への投資を考えている事業者の方に向けて、よく出る9つの質問に、公募要領と事務局のよくあるご質問の原文にそって答えます。いま受け付けている「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の第1回公募(公募要領1.3版、2026年9月28日更新)にもとづいています。

この記事のポイント

  • 建物を建てて他人に貸すだけ、運営を丸ごと他社に任せるだけの事業は対象外です。
  • 介護の事業は株式会社などが行うなら対象になりえますが、障害福祉の事業は対象外になる可能性が高い事業です。
  • 介護報酬で運営する事業は、事業再構築補助金や前の新事業進出補助金では対象外でしたが、今回の第1回から対象になりえます
  • 申請の時点で「常時使用する従業員」が1人もいない会社(役員だけの会社)は申請できません。
  • 交付決定の前に契約・発注した経費と、完成した建物を買う費用は対象になりません。
  • 補助金で建てた建物は、売る・貸す・担保に入れる・別の事業に使うことに長い期間制限がかかります。

「新事業進出補助金」は、いま第1回公募の新しい制度です

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の3つの枠と、建物費が使える枠

2026年からは、これまでの中小企業新事業進出補助金とものづくり補助金が1つになり、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」として公募されています。枠は「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3つで、これまでの新事業進出補助金にあたるのが新事業進出枠です。第1回公募の締切は2026年10月30日(金)18:00、採択結果の発表は2027年1月の予定とされています。

新事業進出枠は、既存事業とは違う新しい市場・高付加価値な事業へ進出する取組が対象です。補助上限は従業員数によって2,500万円から7,000万円(下限750万円)、補助率は1/2(特例により上限や補助率が上がる場合があります)で、建物費が使えるのは新事業進出枠とグローバル枠だけです。既存の製品の量を増やすだけ、単に商圏が違うだけ、といった計画は新事業進出枠に当たらない例として公募要領に挙げられています。制度の全体は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のページにまとめています。

建てて貸すだけ・運営を任せるだけの事業は対象外です

新事業進出補助金で対象外になる建物の使い方と、対象になりうる使い方の比較

公募要領は、補助対象外となる事業として「不動産賃貸(寮を含む)、駐車場経営」など実質的な労働を伴わない事業と、「建築又は購入した施設・設備を自ら占有し、事業の用に供することなく、特定の第三者に長期間賃貸させるような事業」をはっきり挙げています。さらに、補助事業の主な内容を他者へ外注・委託し、企画だけを行う事業も対象外です。建物を建てて運営会社に貸す、いわゆる「建て貸し」は、どちらにも当たります。

建物費の注意書きでも、補助事業で取得した建物を不動産賃貸などに転用することは「一切認められません」とされ、転用すれば目的外使用として残存簿価相当額などを返す必要があります。あとから賃貸に切り替える計画も同じ扱いです。

宿泊施設は、対象外の事業の一覧に名前では挙がっていません。対象になるかは、自社が宿泊業として予約・接客・清掃などの運営を担うかどうかを含めて、事業計画の中身で判断されます。一方で、運営を丸ごと他社に任せる形や、人手をかけずに収益が上がる形は、上の「外注・委託」や「実質的な労働を伴わない事業」に近づきます。誰が運営の中身を担うのかは、事業計画で具体的に示す必要があります。

従業員のいない個人の投資家が、物件を建てて利回りを得るために使うことはできません。後で説明する「従業員0名は対象外」に当たるうえ、事業の中身が不動産賃貸になるためです。

介護・障害福祉の施設は「法人の形」と「売上」の2段階で決まります

介護事業所・障害福祉事業所が新事業進出補助金の対象になるかの判断表

事務局のよくあるご質問は、介護事業所や障害福祉事業所の申請について、「法人の種類」と「事業(売上)の要件」の2段階で判断すると示しています。まず、医療法人、社会福祉法人、一般・公益社団法人、一般・公益財団法人は、法人の形の時点で対象外です。株式会社・合同会社・個人事業主であれば、次の売上の段階に進みます。

売上の段階では、日常的な運営費が公的資金で成り立っている事業は「二重受給」として対象外になります。ただし、公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬は例外とされているため、株式会社などが運営する介護事業所は申請可能です。これに対して、障害福祉サービスの給付金は二重受給に当たるとされ、株式会社が運営する障害福祉事業所であっても「対象外となる可能性が高い事業」と書かれています。

なお、介護施設であっても、建物を建てて別の運営法人に貸す形は、前の項目の「建て貸し」に当たり対象外です。補助金を受けて建てるなら、申請する会社自身が介護事業者として運営することが前提になります。

前の制度では、介護報酬で運営する事業は対象外でした

介護報酬で運営する事業の扱いが、前の制度と今回の第1回で変わったことを示す比較
出典:事業再構築補助金 公募要領(第8回〜第13回)、中小企業新事業進出補助金 公募要領(第3回・第4回)、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回 1.3版)

介護事業所の扱いは、前の制度から変わっています。事業再構築補助金の公募要領(第8回〜第13回)は、対象外となる事業として、国が支出する他の制度(例として「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬」を挙げています)と同一又は類似内容の事業を挙げていました。中小企業新事業進出補助金の公募要領(第3回・第4回)も、「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等との重複を含む事業」を対象外としていました。どちらの制度でも、介護報酬で運営する事業は二重受給として対象外の扱いでした。

今回の新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領(第1回 1.3版)は、二重受給となる事業の書き方を「固定価格買取制度等(公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬は除く)」に改め、診療報酬・介護報酬を対象外の範囲から外しました。よくあるご質問が「株式会社や合同会社等が運営する介護事業所であれば申請可能」としているのは、この書き方によるものです。

前の制度で「介護は対象外」と言われた経験があっても、今回の制度では同じ結論になりません。一方で、障害福祉サービスの給付は「除く」に入っていないので、障害福祉の事業は今回も対象外になる可能性が高いままです。

役員だけの会社は申請できません。直前に雇うときも注意が要ります

新事業進出補助金の「従業員」の数え方で気をつける3つの点

応募申請の時点で従業員が0名の事業者は対象外です。ここでいう従業員は中小企業基本法上の「常時使用する従業員」で、代表者や役員は含まれません。そのため、役員だけで構成されている会社は従業員0名として扱われ、申請できません。

申請までに人を雇って要件を満たしていれば、申請すること自体は可能です。ただし、2か月以内の期間を定めて使用される人や、試用期間中の人は「常時使用する従業員」に含まれません。申請の直前に雇い入れ、まだ試用期間中という状態では、従業員として数えられないおそれがあります。

また、専ら補助金の対象者になることを目的として従業員数などを変更したと認められた場合は、申請時点にさかのぼって対象外になることがあります。申請時には、応募申請時点の最新の内容が載った労働者名簿の写しも提出します。人を雇うなら、補助金のためではなく事業のための採用として、早めに体制を整えておくことが大切です。

交付決定の前の契約・着工と、完成した建物の購入は対象外です

新事業進出補助金の応募から発注・着工できるまでの流れ
出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募スケジュール(第1回公募)

この補助金では、事前着手は認められていません。補助対象になるのは、交付決定日以降に発注(契約)し、補助事業の実施期間内に納品・検収・支払が終わった経費だけです。応募申請の前に契約したもの、採択されたあと交付決定の前に発注・着工したものは、どちらも対象になりません。

流れは、応募申請、採択発表、交付申請(原則として採択発表日から2か月以内)、交付決定の順です。第1回公募は締切が2026年10月30日、採択結果の発表が2027年1月の予定なので、建物の工事を始められるのはその後の交付決定を受けてからになります。工事の時期がすでに決まっている場合は、補助金の日程に合わせられるかを最初に確かめる必要があります。申請から入金までの全体は補助金の申請から入金までの流れで説明しています。

完成した建物や中古の物件を買う費用も対象外です。公募要領は建物費について「建物の単なる購入や賃貸は対象外」とし、補助対象外の経費にも「不動産の購入費」を挙げています。建物費の対象は、補助事業のために使う建物の建設・改修、補助事業の実施に必要な建物の撤去、その建物に付随する構築物の建設です。

補助金で建てた建物は、売る・貸す・別の事業に使うことに制限があります

補助金で取得した建物・設備にかかる処分制限の3つの点
出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.3版

補助事業で取得した単価50万円(税抜き)以上の建物・設備などは「処分制限財産」となり、売る・貸す・交換する・担保に入れる・廃棄するといった処分に制限がかかります。期間は減価償却資産の耐用年数の省令を準用し、事業計画期間が終わったあとも、法定耐用年数を過ぎるまで制限が続きます。処分するときは事前に事務局の承認を受け、残存簿価相当額または譲渡額などにより、補助金額を上限に納付しなければなりません。

取得した財産は、原則として「専ら補助事業に使用」する必要があります。過去から行っている既存の事業や、事業計画書にない事業に使うと、目的外の使用として残存簿価相当額などを納付することになります。

建物に抵当権などの担保を設定することも「担保に供する処分」に当たり、原則として認められません。補助事業のための資金調達に限り、事前の承認を受けたうえで認められますが、根抵当権の設定は認められません。金融機関から借りて建てる計画では、この点を早い段階で金融機関と共有しておく必要があります。

よくある質問

今の事業をやめて、まったく別の事業に切り替えるのに使えますか?

新しい事業への切り替え自体は、新事業進出枠の要件(新しい製品・新しい市場)を満たせば対象になりえますが、要件の判定は会社全体で行われる点に注意が要ります。賃上げ要件は既存事業を含む全従業員の給与で、付加価値額要件も事業者全体の数字で判定されます。主として従業員の解雇を通じて要件を達成させるような事業は対象外とされ、補助事業で取得した財産を既存事業に使うこともできません。人を減らしながら事業を入れ替える計画は、要件を満たすのが難しくなります。

似たテーマの申請が集中すると不利になりますか?

不利になることがあります。公募要領は、特定の期間に類似のテーマ・設備の申請が集中している場合は一時的な流行による過剰投資のおそれがあるとして別途審査を行い、過剰投資と判断した申請は大幅に減点すると定めています。また、他の事業者と同一または類似した内容の事業計画は「事業計画の重複」として対象外となり、採択後に分かれば採択取消・交付決定取消になります。

熊本地震の被害を受けた会社は、審査で考慮されますか?

第1回公募では、熊本県内に所在し、令和8年熊本地震の被害を受けた申請者について、その事情を審査で考慮すると事務局が公表しています。要件そのものが緩くなるわけではないため、この記事で挙げた対象外の事業・経費には同じように当たります。

補助金をもらえば、建物の費用の半分は必ず戻りますか?

必ずではありません。採択は事業計画に書いたすべての経費を保証するものではなく、交付申請のあとの精査で、交付決定額が申請額より減ったり、全額対象外になったりすることがあります。また、補助金は事業が終わって実績報告と確定検査を経てから支払われるため、工事代金はいったん自社で全額を払う必要があります。

出典・参考

まとめ

新事業進出補助金で対象外になりやすいのは、建物を建てて貸すだけ・運営を任せるだけの事業、障害福祉のように公的な給付で成り立つ事業、従業員のいない会社、交付決定前に動いた経費、完成した建物の購入です。介護の事業や宿泊施設は、申請する会社自身が運営を担う形なら対象になりえます。補助金で建てた建物は長い期間、売却・賃貸・担保・別用途への使用に制限がかかるため、その後の使い方まで含めて計画を立てることが大切です。公募要領は改訂されることがあるため、申請の前に公式サイトで最新の版を確かめてください。

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