令和8年熊本地震で店舗や工場、機械、事業用の車両が被害を受けた熊本の事業者さんに向けて、「くまもと事業者再出発支援補助金」の概要をまとめました。熊本県の交付要綱・手引き(令和8年10月5日更新)・Q&A(令和8年10月28日更新)をもとに、補助率と上限額、対象になる経費とならない経費、申請の流れを順番に説明します。
とくに「多重被災事業者」に当てはまるかどうかで、受け取れる補助金が大きく変わります。車両の永久抹消や財産の処分制限など、見落としやすい点もあわせてお伝えします。
この記事のポイント
- 補助率は中小企業者等が3/4、中堅企業が1/2で、1事業者あたりの上限はどちらも3億円です
- 多重被災事業者に当てはまると、5億円まで定額補助(10/10)、上限は15億円になります。5つの要件をいずれも満たす必要があります
- 申請の締切は、第1次が令和8年10月26日(月)、第2次が11月17日(火)、第3次が12月16日(水)です。発災日(令和8年7月28日)以降であれば、交付決定の前に復旧した経費も対象になります
- 車両を買い替えるときは、被災した車両の廃車(永久抹消)が必要です
- 補助金で復旧した施設・設備は「処分制限財産」になり、一定の期間は勝手に売ったり取り壊したりできません
熊本地震で事業者が使える支援は大きく3つ
令和8年熊本地震で影響を受けた事業者さんが使える支援は、大きく分けて3つあります。1つ目が今回お話しする「くまもと事業者再出発支援補助金」、2つ目が「小規模事業者持続化補助金 一般型 災害支援枠(令和8年熊本地震)」、3つ目が融資による資金繰りの支援です。

この記事で扱うのは、被災した事業用の施設・設備を復旧するための補助金です。資金繰りの支援(熊本県の金融円滑化特別資金・小規模事業者おうえん資金)については、令和8年熊本地震の中小企業者向け新資金の記事で説明しています。
補助制度の概要:施設・設備の復旧を国と県が支援
この補助金は、令和8年熊本地震で被災した事業用の施設・設備の復旧にかかる経費の一部を、国と県が支援するものです。ポイントは「事業用に使っていた施設・設備を、その所有者が復旧するための補助金」だという点です。
- 被災したことの証明(写真・市町村が発行する被災証明書等)が必要です
- 原則として、施設は登記されているもの、設備は資産計上されているもの(固定資産台帳に載っていて減価償却しているもの)に限り対象です
- 復旧は修理(修繕)が原則です。設備が修理不能と認められる場合は入替、施設が「全壊」または「大規模半壊」と判定された場合は建替ができます
- 見積書の比較で、修理(修繕)費より入替(建替)費のほうが安いと認められる場合も、入替(建替)ができます
グレードアップはできるが、補助の上限は「元に戻す費用」まで
従前より規模を広げた施設への建替や、高機能・高性能の設備への入替もできます。ただし、原状回復のために必要な経費(修理費、または同等の設備への入替費・同等の建物への建替費)が補助対象経費の上限になります。
たとえば、300万円の設備が使えなくなり、機能の上がった後継機種(500万円)に買い替えることはできます。ただし補助の対象になるのは、元の設備と同等の設備に入れ替える費用までで、原状回復に係る見積書も別に必要です。
補助対象者・補助率・補助上限額
対象になるのは、熊本県内に事業所があり、中小企業者等(小規模事業者・個人事業主を含む)または中堅企業(みなし中堅企業を含む)に当てはまる事業者です。それ以外の企業は補助対象外です。

| 区分 | 補助対象者 | 補助率 | 1事業者あたりの補助上限額 |
|---|---|---|---|
| ① | 中小企業者等(小規模事業者、個人事業主含む) | 3/4 | 3億円 |
| ② | 中堅企業及びみなし中堅企業(資本金又は出資金の価額が10億円未満) | 1/2 | 3億円 |
| ③ | 多重被災事業者(①②のうち別途定める要件に該当) | 5億円まで定額補助(10/10)。5億円を超える場合は①②に準ずる | 15億円 |
| ④ | 特定被災事業者(①②のうち別途定める要件に該当) | ①②の補助率に準ずる | 15億円 |
中小企業者等からは、みなし大企業・みなし中堅企業は除かれます。
対象にならない法人・事業者
手引きの「補助対象となる中小企業者の定義」の表では、中小企業者の定義に当てはまらない会社・個人のほか、次の法人・事業者が補助対象外とされています(中堅企業・みなし中堅企業は、上の表の②のとおり対象です)。
- 一般財団法人・公益財団法人、一般社団法人・公益社団法人、医療法人、特定非営利活動法人、社会福祉法人、学校法人、宗教法人、信用金庫、法人格のない任意団体、地方自治体
- みなし大企業、農林水産事業者(一次産業を営む事業者。加工業や販売業の施設・設備の復旧は対象)
- 風営法第2条第5項の「性風俗関連特殊営業」を営む者
- 熊本県税に未納がある者、暴力団・暴力団員等・暴力団密接関係者
神社やお寺などの宗教法人は、この一覧に入っているので、対象になりません。
風営法の許可・届出が要る事業者について、Q&Aは、補助の対象にならないのは「性風俗関連特殊営業」を営む事業者だとしています。具体的には、店舗型性風俗特殊営業、無店舗型性風俗特殊営業、映像送信型性風俗特殊営業、店舗型電話異性紹介営業、無店舗型電話異性紹介営業です。接待をする飲食店や、マージャン店・ゲームセンターなど、風営法第2条第1項の「風俗営業」の許可を受けて営む事業者は、この区分に入らないので、それだけを理由に対象外にはなりません。ほかの要件(中小企業者等であること、事業用の施設・設備が地震で被災したことなど)で判断します。
賃貸物件の条件にある「風営店は不可」についても、県の「補助対象施設の利用状況表」で補助の対象にならない店子を示す欄は「特定風営店」で、交付申請書記載例では、これを性風俗関連特殊営業を営む事業者のことと説明しています。
保険金を受け取った分は差し引かれる
保険金や共済金を受け取った場合は、復旧費用から保険金等を差し引いた金額が補助対象経費になります。補助金額は「補助対象経費(税抜き)× 補助率」で、千円未満は切り捨てです。たとえば復旧に3億円かかり、1億円が保険金で出た場合、補助の対象になるのは残りの2億円です。保険金を請求できるのに、請求しないことにした物件は、補助の対象外になります。受け取る額が申請の時点で決まっていなければ、実績報告のときにあわせて出します。
多重被災事業者の5つの要件
いちばん大事なのがここです。中小企業者等の補助率は3/4ですが、多重被災事業者に当てはまれば5億円まで定額(10/10)になります。4億円の復旧なら、通常は3/4で3億円のところ、多重被災事業者なら4億円まで補助を受けられる計算です。

多重被災事業者になるには、次の①〜⑤をいずれも満たす必要があります。
- 新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者
- 令和8年熊本地震の発生日から過去10か年度以内に発生した激甚指定災害で被害を受け、事業用資産への被災が証明でき、かつ国等の復旧・復興支援を活用した事業者
- 次のいずれかに当てはまる事業者(ア:過去10か年度以内に発生した災害の発生日以降、売上高が20%以上減少している/イ:地震発生時に厳しい債務状況にあり、経営再建等に取り組み、認定経営革新等支援機関に事業計画等の確認を受けている)
- 交付申請時に、過去10か年度以内に発生した災害からの復旧・復興のための債務を抱えており、都道府県知事が認めた事業者
- 令和8年熊本地震で施設または設備が被災し、その復旧または復興を行おうとする者
要件①の「新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者」とは、持続化給付金・月次支援金・事業復活支援金など国や県のコロナ支援策を使った、感染防止対策をした、営業時間の短縮や臨時休業などで事業に制約や変更があった、令和2年1月から令和5年5月までの任意の3か月の売上高が、過去3か年(前年・前々年・3年前)のいずれかの同じ期間より5%以上減った、のいずれかに当たる事業者です。休業していたことなどでコロナの影響を受けていないことが明らかな事業者には、要件①は適用されず、要件③アの売上の比べ方で「令和2年1月28日以降の災害は令和2年1月28日を起点にする」扱いも適用されません。
要件②の「過去10か年度以内に発生した激甚指定災害」は、熊本県では平成28年熊本地震、令和2年7月豪雨、令和7年8月豪雨です。「国等が実施した支援を活用した」には、それぞれの災害のグループ補助金・なりわい再建支援補助金・被災中小企業者再建支援補助金のほか、日本政策金融公庫等の災害復旧貸付やセーフティネット保証4号、災害を踏まえた返済猶予などの条件変更も含まれます。
要件④の債務は、過去の災害からの復旧・復興のための借入れ(被災した施設・設備の復旧資金や、営業停止に伴う運転資金など)です。新型コロナウイルス感染症に起因する債務は当たりません。過去の災害のときの借入れを、その後コロナの名目で借り換えている場合は、借入先の金融機関が発行する申出書で、過去の災害に係る債務が含まれていることを確認できれば対象になります。
定額で補助されるのは5億円までで、5億円を超える分の補助率は、中小企業・小規模事業者が3/4以内、中堅企業・みなし中堅企業が1/2以内です。
細かい点は、別紙「くまもと事業者再出発支援補助金定額補助(多重被災事業者)申請マニュアル」に書かれています。
要件③と④は、とくに丁寧に確かめる
③アは売上高の20%以上の減少が条件なので、前の災害のあと売上が回復・成長してきた事業者は当てはまりません。その場合はイで当てはまるかを見ることになります。④は、過去の災害からの復旧・復興のための債務を抱えていることが条件です。借入れをせずに手元資金で乗り切った事業者は、ここで外れてしまいます。
事務局からは「当てはまりますよ」と教えてもらえない
当法人の見立てでは、事務局の側から「御社は多重被災事業者に当てはまるので、こちらで申請したほうが有利ですよ」と教えてもらえることは期待できません。当てはまるのに通常の区分で申請すると、補助率3/4と定額(10/10)の差、つまり4分の1の分だけ損をすることになります。
「よく分からないから、とりあえず通常の区分で出そう」とするのがいちばんもったいない進め方です。マニュアルを読み込み、まず多重被災事業者に当てはまらないかを確かめてから、区分を決めてください。
特定被災事業者と、BCP・損害保険の2つの要件
特定被災事業者
特定被災事業者は、令和8年熊本地震で被災した小規模事業者等のうち、サプライチェーンにとって不可欠で、被害の規模が多重被災事業者に相当するものとして、熊本県知事が認め、九州経済産業局長が承認する事業者です。承認されると補助上限額が15億円になります。
その会社がなくなると取引先が連鎖的に立ち行かなくなるような、重要な位置にある事業者のことです。補助額が3億円を超える事業者を想定しています。承認されても定額補助にはならない点に注意してください。
要件(1)事業継続計画(BCP)の策定
補助を受ける事業者には2つの要件があり、どちらも実績報告書で確認されます。

熊本県のホームページに「熊本県版事業継続計画(BCP)シート」が掲載されています。事業者が独自で策定するBCPや、国が認定する事業継続力強化計画でも構いません。
要件(2)損害保険への加入
2つ目は、補助対象になる施設や設備について、自然災害(風水害を含む)による損害を補償する保険・共済に加入することです。

付保割合は、中小企業者等が30%以上、中堅企業が40%以上です。付保割合とは、対象の施設等の再調達価格に対する保険金の設定割合のことです。入る保険は「新価(再調達価額)」型です。「時価」型は付保割合を保証できないため、認められません。火災保険などの特約でも、条件を満たしていれば構いません。付保割合は、補助対象経費ではなく、補助の対象になる施設・設備全体の再調達価額で見ます。修繕の場合も同じです。
小規模事業者(製造業・建設業・運輸業その他と宿泊業・娯楽業は従業者20人以下、卸売業・小売業・サービス業は5人以下)は、保険・共済への加入が義務づけられてはいません(「加入推奨」)。ただし交付要綱では、令和8年熊本地震で得られた教訓を踏まえて、保険・共済への加入に代わる取組をすることとされています。
申請の締切/補助対象期間の特例

申請の受付は令和8年10月1日(木)から始まっています。締切は次のとおりで、今後の日程は県のページに随時載ります。
| 公募回 | 受付期間 |
|---|---|
| 第1次 | 令和8年10月1日(木)〜10月26日(月) |
| 第2次 | 令和8年11月2日(月)〜11月17日(火) |
| 第3次 | 令和8年12月1日(火)〜12月16日(水) |
熊本県は、この補助金への国の支援に上限額があるため、事業者がいつ、どのくらい申請するかを把握する調査をしています。この調査(「申請予定額連絡票」への回答)は、令和8年10月31日(土)が期限で、すでに終わっています。
申請は原則1回です。ただし、施設と設備で分けて申請するなど分割する場合は、原則として上限2回までです。事業所や支店が複数あるときは、全部を合わせて、事業者として申請します。

補助金は、原則として交付決定日以降に発生した経費が対象です。ただし今回は特例として、発災日(令和8年7月28日)以降であれば、交付決定の前に復旧した経費も補助対象になります。写真や書類等で被害状況を確認できる場合に限られます。
「もう直してしまったから」とあきらめず、被害の写真や見積書・請求書をそろえて申請を検討してください。
申請の方法・全体の流れ・必要書類
申請方法
申請書類は「くまもと事業者再出発支援補助金受付センター」に、郵送または持参で提出します。受付センターは令和8年10月1日(木)から運用しています。
- 所在地:〒862-0954 熊本市中央区神水1丁目3-1 ヨネザワ熊本県庁前ビル4階
- 受付時間:9時00分〜17時00分(土曜・日曜・祝日を除く)
- 電話番号:096-284-7660(FAX 096-284-7685、メール info@k-restart2026.com)
- 車で行くときは、熊本県庁の駐車場を使います(徒歩で約5分)
全体の流れ

申請書類は同じものを2部用意し、1部を提出、もう1部を控えとして保管します。気をつけたいのは、実績報告が事業完了から15日以内という点です。工事や支払いが終わってから書類を集め始めると間に合わないので、復旧を進めながら実績報告の書類も並行してまとめておくことが大事です。交付決定の前に復旧と支払いが終わっている場合は、交付決定の日から15日以内です。また、補助事業は、原則として年度内に支払いまで終える必要があります。
交付申請に必要な主な書類

共通の書類は、申請書・計画書に加えて、登記簿や決算書、熊本県税に未納がないことの証明書(納税証明書:28号様式)、被災(罹災)証明書、被害状況が分かる写真、保険(共済)金の受領を証する書類などです。そのうえで、施設・設備・車両のどれを復旧するかによって、見積書や図面、固定資産台帳などが加わります。
申請の時点で着手済み・完了している事業があれば、見積書とあわせて発注書または契約書、請求書等も提出します。これは基本的なケースの例示で、申請の内容によっては、ここにない書類を求められる場合があります。書類ごとの注意点(罹災証明書・写真・図面・見積書など)は、「くまもと事業者再出発支援補助金の申請方法と必要書類」の記事にまとめています。
対象になる施設・設備・車両と、対象にならないもの
補助対象経費は、証拠書類によって申請者自身が支出済みであることが明確なものに限られます。支払いは原則、口座振込です。
施設

店舗・事務所・工場・倉庫などの事業用の建物を復旧するための修繕費または建替費(建築・購入)が対象です。原則、登記されている施設に限られます。
注意したいのは、住宅用の建物(アパート・マンション等の賃貸物件を含む)は対象にならないことです。住居用として貸している建物は、どれだけ被害が大きくても対象外です。店舗兼住居は、面積按分で事業用部分だけが対象になります。
設備

機械装置などの事業用の設備を復旧するための修理費または入替費(購入)が対象です。原則、資産計上されている設備に限られます。
対象にならないのは、賃貸目的の設備、テーブル・イス等の備品や食器・調理器具・什器のように汎用性があるもの、商品・在庫・仕掛品・原材料、消耗品、ソフトウェア等の無形資産などです。商品や在庫、仕掛品が対象にならないのは事業者さんにとって痛いところで、そこは保険で手当てするしかないと考えています。
車両

被災前に所有していた事業用の車両を復旧するための修理費または入替費(購入)が対象です。原則、資産計上されている車両に限られます。レンタカー等の賃貸目的の車両、社長車や通勤に使える車両、自動車取得税・重量税・登録費用などの法定費用等は対象外です。
施設・設備に共通する経費

施設・設備の復旧のために発生する処分費、撤去費、据付費、運搬費、地盤改良に係る経費なども対象です。ただし、これらを単独で行うものは対象外です。
地盤・土壌改良、被災した施設の解体、がれきの撤去の費用も、現地での復旧に必要不可欠な場合は対象になります。移転して建て替える場合は、元の施設の解体費などが原則として対象外になるなど場合分けが細かいので、計画の段階で早めに見極めておくことが大切です。対象になる経費・ならない経費は、「くまもと事業者再出発支援補助金で対象になる経費・ならない経費」の記事で詳しく整理しています。
一方で、被害を立証する書類が出せないもの、令和8年熊本地震に起因せず使用不能となったもの、発災前から使われていなかったもの(空き店舗等)は対象になりません。租税公課・保険料・保守費用、清掃・消毒費、申請手数料や申請代行費用、自社で復旧する場合の人件費なども対象外です。
登記・資産計上がないとき/賃貸物件・リース品の取扱い
登記や資産計上がされていない場合
登記されていない施設や資産計上されていない設備でも、被災前に所有していたことと事業用に使っていたことを証明できれば、補助の対象になる場合があります。施設なら固定資産課税台帳証明書や名寄帳の写し、設備なら売買契約書や購入業者・メンテナンス業者からの証明など、第三者が客観的に証明できる書類が例に挙げられています。
「なる場合がある」なので、必ず対象になるわけではありません。未登記の古い建物は意外と多いので、登記されていない建物があるなら、まず登記を検討してください。
賃貸物件・リース品
賃貸物件(施設)やリース品(設備)は、店子や使用者の事業継続に必要不可欠な場合に補助対象になります。住居用の賃貸物件や、レンタカー等の一般消費者向けレンタル品は対象外です。申請者は原則として所有者である大家またはリース会社です。店子が大家から物件を譲り受けたうえで、店子が申請することもできます。賃貸物件が対象になるのは、①最終的な使用者が事業用として使っている ②地震のときに入居していた店子が、復旧後も引き続き入居する ③店子自身が補助対象者である(大企業や任意団体、風営店は不可)の3つを満たす場合です。誰が申請するかは、「くまもと事業者再出発支援補助金は誰が申請する?」の記事でくわしく説明しています。
よくある見落とし:車両の入替には「永久抹消」が必要
車両を入替(購入)で復旧する場合は、被災した車両を廃車(永久抹消)にする必要があります。使えなくなった車を車屋さんに引き取ってもらっただけで、永久抹消をしていなければ、新しい車の購入は補助の対象になりません。前回の豪雨災害の補助金でも、買い替えたのに永久抹消をしていなかったために対象にならなかった、ということがありました。
一時抹消の登録だけでは入替と認められず、車両が解体されたことを示す書類(普通自動車は登録事項等証明書、軽自動車は検査記録事項等証明書)が要ります。取得が難しいときは、自動車リサイクルシステムで「破砕工程」まで終わっていることが分かる画面を印刷したもので代えられます。また、地震のときに車検が切れていた車両は対象外で、地震のあとに車検を通した車両は入替の対象になりません。
また、中古市場に出回るもの(下取り)は修理可能と判断されます。仮に「修理不能申告書」を出していても、入替による復旧は認められません。ただし、修理できる車両でも、修理費より「下取りを差し引いたあとの入替価格」のほうが安い場合は、下取りしての入替による復旧も対象になります。この場合は、下取り後の入替価格が補助対象経費で、被災車両の永久抹消の証明は要りません。
そもそも対象になるのは、被災時に申請者が所有し、事業用のみに使っていた車両です。復旧後の車両にも、車体に企業名や屋号等または補助金名を表示するなどの決まりがあります。詳しくは別紙「くまもと事業者再出発支援補助金に関する車両の復旧に係る取扱いについて」を確認してください。
その他の留意点:相見積・変更申請・重複申請・額の確定
見積書は2者以上から
1件当たりの工事費(修繕、購入等)が100万円(税込)以上になる場合は、2者以上から見積書を取ります。1者の見積でよいのは、①すでに復旧が終わっている ②すでに発注・契約している ③特殊な設備で、ほかに対応できる事業者がいない ④複数の事業者に頼んだが、忙しいなどの理由で断られた、のどれかに当たる場合で、「見積書が不足している理由書」を出します。
内容が変わるときは事前に相談
交付決定後に補助事業の内容が変わる場合は、事前に相談が必要です。補助対象経費全体の減少額が30%を超える場合など、内容によっては変更申請の手続きが要ります。型番や金額が変わるときも、変更申請が要るかもしれないと考えて先に確かめてください。
補助金の重複はできない
同じ施設や設備の復旧に、この補助金以外の国や県などの補助金を重ねて使うことはできません。
交付決定は「支払いの約束」ではない
交付決定は補助金の支払いを約束するものではなく、交付決定した額を増やすこともできません。実績報告をもとに県が書類審査や現地調査を行い、適正と認めた場合に額が確定します。「予算取り」のつもりで多めに申請せず、実際にやる内容で申請することが大切です。
支払いは、額が確定したあとの精算払が原則です。一定の要件を満たす場合は、交付決定日から実績報告の提出日までの間に1回限り概算払を請求できますが、希望する場合は事前の相談が必要です。
公表・経理・財産管理
交付決定を受けた事業者の名称・所在地は、県のホームページで公表されます。補助金で復旧した施設・設備は資産計上し、帳簿や証拠書類(契約書・請求書・領収書など)は、補助事業を完了した年度の終了後、財産処分制限期間中、保存しておかなければなりません。国(会計検査院等)の検査が行われる場合もあります。
財産の処分制限は要注意
ここは意外と知られていないところです。補助金を使う前に、必ず頭に入れておいてください。

補助金で復旧した施設・設備は「処分制限財産」に当たります。設備は、取得価格または効用の増加額が50万円以上の場合です。一定の期間内に、別の目的での使用、譲渡、貸付、取壊し、廃棄、担保権の設定、事業の中止などを行う場合は、事前に県の承認が必要です。処分の内容によっては、補助金相当分を返還する場合があります。
期間の例として、手引きには「木造店舗22年、食料品製造業用設備10年、貨物自動車5年」が挙げられています。減価償却の年数を目安に考えると分かりやすいと思います。たとえば木造店舗を建て直して補助を受けた場合、22年の途中で事業をやめたり店舗を譲ったりすると、残りの期間に応じた補助金の返還を求められることがあります。
補助金のコンサルタントの中には、こうしたリスクを説明しない人もいます。当法人では、補助金を使うリスクを事前にきちんとお伝えするようにしています。何年も先に「補助金を返してください」と言われて困らないように、処分制限がある前提で活用を考えてください。
出典・参考
- 熊本県「令和8年熊本地震に係る『くまもと事業者再出発支援補助金』の交付申請手続きについて」(令和8年10月28日更新)
- 熊本県のページの「くまもと事業者再出発支援補助金交付要綱」
- 熊本県のページの「手引き(補助金の概要、留意点等)」
- 熊本県のページの「Q&A」
- 熊本県のページの「定額補助申請マニュアル」
- 熊本県「令和8年熊本地震に係る くまもと事業者再出発支援補助金概要」(令和8年9月18日作成)
Q&Aは随時更新されます。申請の前に、熊本県のページで最新の内容を確かめてください。
まとめ
くまもと事業者再出発支援補助金は、令和8年熊本地震で被災した事業用の施設・設備・車両を、その所有者が復旧するための補助金です。中小企業者等は3/4、中堅企業は1/2で上限はどちらも3億円、多重被災事業者に当てはまれば5億円まで定額(10/10)で上限15億円になります。
見落としやすいのは、多重被災事業者に当てはまるかを自分で確かめること、車両の入替には永久抹消が必要なこと、実績報告が事業完了から15日以内であること、補助金で復旧した財産には処分制限がかかることです。第1次申請は令和8年10月26日(月)で締め切られ、第2次は11月2日(月)から11月17日(火)まで、第3次は12月1日(火)から12月16日(水)までです。
ご相談はこちら
ノーサイド行政書士法人は、熊本の補助金申請を支援している行政書士法人です(経済産業省の認定経営革新等支援機関)。多重被災事業者の要件③イにある「認定経営革新等支援機関による事業計画等の確認」についても、ご相談いただけます。
「うちの場合は対象になるのか」「多重被災事業者に当てはまりそうか」など、分からないことがあればお気軽にご連絡ください。
