令和8年熊本地震で被災された皆さまへ

このたびの地震で被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。事業の再建に使える補助金・融資の解説をまとめました。

くまもと事業者再出発支援補助金で対象になる経費・ならない経費【熊本地震】

令和8年熊本地震で被災した店舗や工場、機械を直すときに使える「くまもと事業者再出発支援補助金」について、補助の対象になる経費とならない経費をまとめました。熊本県の手引き(令和8年10月5日更新)とQ&A(令和8年10月13日更新)に書かれていることをもとにしています。

見積を取ったあとで「この費用は対象外だった」と分かると、計画を組み直すことになります。工事を頼む前に、一度目を通していただけたらと思います。制度の全体像は「【令和8年熊本地震】くまもと事業者再出発支援補助金の補助率・要件・注意点」の記事にまとめています。

この記事のポイント

  • 対象になるのは、地震で被災した事業用の施設・設備・車両を元に戻すための費用です。規模を広げたり性能を上げたりすることもできますが、補助の上限は元に戻す費用までです
  • 仮設店舗や応急処置などの仮復旧、見積のための事前調査、被災後に借りた建物の家賃、逸失利益は対象になりません
  • 解体・がれき撤去・地盤改良は、それだけでは対象になりません。現地での復旧に欠かせない範囲で、復旧に付随する費用として対象になることがあります(移転する場合は、元の施設の分は原則として対象外)
  • 移転しての建替が対象になるのは、元の場所での復旧が難しい理由がある場合で、移転先は熊本県内に限ります
  • 保険金を請求できるのに、請求しないことにした物件は、補助の対象になりません

基本の考え方:元に戻す費用が上限

この補助金は、事業用に使っていた施設・設備を、その所有者が復旧するためのものです。復旧は修理(修繕)が原則で、設備が修理不能と認められる場合は入替、施設が「全壊」または「大規模半壊」と判定された場合は建替ができます。見積書の比較で、修理(修繕)より入替(建替)のほうが安いと認められる場合も、入替(建替)ができます。

半壊など修繕で直せる場合でも、修繕で元に戻す費用を上限にして建て替えることはできます。設備も同じで、修理で元に戻す費用を上限にして入れ替えられます。この場合は、実際に行う工事の見積とは別に、元に戻す工事(原状回復工事)の見積書を出します。

補助対象経費は税抜きで、消費税は対象になりません。値引きがある場合は、値引き後の税込価格を消費税率で割り戻した額が補助対象経費です。

規模を広げる・性能を上げる・小さくする

被災前より大きな建物や、性能の高い設備にしてもよいですか?

できます。元に戻すのに必要な費用を上限として、防災・減災のための改良(補強)や、性能を上げる機能の追加・拡充ができます。補助の対象になるのは元に戻す費用までなので、実際の工事とは別に、原状回復工事の見積書を出します。

熊本県のQ&Aには、パン焼き機を、同じ時間でより多くのパンが焼ける機械に入れ替える例や、全壊した事務所を倍の広さの事務所に建て替える例が挙げられています。一方で、パン焼き機を食洗機に変える、事務所を介護施設に変えるといった、別の設備・別の用途に変えることはできません。

被災前より小さくしてもよいですか?

できます。従前と同等以下(規模縮小)で復旧することもできます。地震のあとの事業の環境を考えて、事業を続け、売上を戻すのに合った復旧計画にします。

プレハブや中古物件で復旧できますか?

できます。被災した施設を修繕で元に戻す費用を上限に、プレハブ(土地に固定するものに限る)や中古物件で復旧できます。この場合、被災した施設の解体費用は対象になりません。買ったプレハブや中古物件が被災した施設より広いときは、被災した施設の面積の分だけが対象です。

建替・解体・がれき・地盤

建て替えるときの設計費は対象になりますか?

実際の建築工事に必要な設計費は対象です。見積を取るための費用と、設計の前提となる耐震診断の費用は対象になりません。

古い建物の解体費用は対象になりますか?

解体だけでは対象になりません。建て替えるときに、被災した施設が支障になる場合は、対象になることがあります。手引きでは、現地で建て替える場合の解体費用は復旧に付随する費用として対象とされていますが、同じ敷地の中で建て替える場合でも、解体費用が対象外になる場合があるとされています。

がれきや土砂の撤去は対象になりますか?

撤去だけでは対象になりません。撤去しないと事業を再開できない場合など、施設・設備の修繕や入替に必要なときは、付随する費用として対象になります。

液状化の地盤改良や、土地のかさ上げは対象になりますか?

地震で地盤や土壌に被害があり、建物などの復旧工事に必要な範囲で、地震の前の状態に戻すための地盤改良・土壌改良は対象です。施設の復旧に付随しない地盤改良だけを行うものは対象外です。土地のかさ上げなど、土地の造成の費用は対象になりません。

移転して建て替えることはできますか?

原則は、元の場所での建替(原状回復)です。移転しての建替が対象になるのは、河川の拡幅工事による立ち退き、市町による集団移転計画、液状化に伴う建築制限、ハザードマップの災害想定区域の外への移転など、事業者の責めに帰さない他律的な要因や合理的な理由で、元の場所での復旧が難しい場合です。移転先は熊本県内に限ります。

移転するときは、現地で建て替える場合と対象経費が変わります。手引きでは、元の施設の地盤・土壌改良費、元の施設や移転先にある施設の解体費、元の土地や移転先のがれき撤去費は、原則として対象外とされています。移転を伴う復旧は、Q&Aで事前に県へ相談することとされているので、計画の段取りに早めに入れておきます。

対象にならない費用

手引きとQ&Aで対象にならないとされている、主なものです。

  • 仮設店舗や応急処置など、仮復旧の費用
  • 見積のための事前調査や点検の費用、設計の前提となる耐震診断の費用
  • 砂利・植栽・芝生の復旧、土地の購入、土地のかさ上げ
  • 塀・フェンス・ポンプの新設・増設など、防災のために整備する費用
  • 貨物や商品などの移動費や一時保管の費用
  • 被災後に借りた空き工場などの家賃
  • 風評被害などによる逸失利益(間接的な損害)
  • 振込手数料、租税公課・保険料・保守費用、地震に係る清掃・消毒費
  • 各種申請・許認可の手数料や申請代行の費用
  • 商品・在庫・仕掛品・原材料、文房具などの消耗品、ソフトウェア等の無形資産
  • テーブル・イス等の備品、食器・調理器具、書類棚・食器棚・陳列棚等の什器のように、汎用性があり目的外にも使えるもの
  • 地震が原因でなく使えなくなったもの、地震の前から使われていなかったもの(空き店舗など)
  • 住宅用の建物(アパート・マンション等の賃貸物件を含む)

逸失利益のような間接的な被害については、Q&Aで持続化補助金などを使った販路開拓を検討するよう案内されています。小規模事業者の方は「【熊本地震】持続化補助金の災害支援枠」の記事もあわせてご覧ください。

設備・電子機器・車両

パソコンやルームエアコンは対象になりますか?

資産計上されていない備品・什器は原則として対象になりません。パソコンやルームエアコンのような電子機器や車両は、資産計上されていて、被災前に所有していたこと、業務用だけに使っていたことなどを証明できれば、対象になることがあります。ソフトウェアは原則として対象外です。業務外で使っていたことが分かると、補助金を受け取ったあとでも返還を求められます。

パソコンを買い替えるとき、被災前より新しいOSのものを買う場合は、買った当時から技術や市場が変わっていて、いまはそれが一般的といえるようなときに、原状回復として対象になることがあります。新旧の性能は、原則としてCPU(速度・コア数)、メモリー容量、ストレージの種類・容量、モニターのサイズ・解像度、形状、価格で比べます。

地下にあった電源設備を、上の階に移して設置できますか?

地下に置き直すと災害のたびに故障し、もともと期待されていた働きができないような場合は、上の階への設置も原状回復として扱われます。ただし対象になるのは電源設備の調達などの費用で、上の階への運搬や床の補強など、追加でかかる費用は対象外です。元に戻す工事の費用と実際の工事の費用を比べて、低いほうに補助率を掛けた額が上限になるので、原状回復工事の見積書も出します。

設備をリースで復旧してもよいですか?

設備の入替で対象になるのは購入の費用だけなので、持っていた設備をリースで復旧する場合は対象になりません。ただし、被災後にやむなくリースに切り替えて使っていた設備について、リース契約を解除し、残りを払って所有権を移した場合は対象になります。

車両は対象になりますか?

被災前に所有していて、事業のためだけに使い、事業内容に適した車種で、事業用だけで資産計上されている車両が対象です。車体の企業名・屋号の表示、運行記録や業務日報、保管場所が事業所であること、任意保険の使用目的が「事業使用」になっていることなどを、あわせて見て判断されます。個人事業主の車で、税の申告の「事業専用割合」が100%でないものは対象外です。

入替のときに被災車両の永久抹消が要ることなど、車両の決まりは「【令和8年熊本地震】くまもと事業者再出発支援補助金の補助率・要件・注意点」の記事にまとめています。

こんなときは

店舗兼住宅は、どこまで対象になりますか?

事業用の部分だけが、面積で按分して対象になります。復旧費を「事業用のみの事業費」(店舗・事務所部分の床・内壁・天井などの内装)、「非事業用のみの事業費」(住居部分の内装や、キッチン・ユニットバスなどの住宅設備)、「全体影響事業費」(基礎・躯体・屋根・外壁など)に分け、対象になる面積の割合を掛けて計算します。計算には県の様式「補助対象施設の利用状況表及び按分計算書」を使います。

福利厚生施設や駐車場は対象になりますか?

福利厚生施設は、事業用資産として資産計上されていて、事業を続けるのに欠かせない場合は対象になります。駐車場も、事業用資産として計上していて事業の継続に欠かせない場合は対象です。月極駐車場や時間貸しの駐車場は賃貸物件になるので、対象になりません。

自社で復旧工事をした費用は対象になりますか?

対象になりますが、自社の利益は除きます。対象になるのは材料費などの実費だけで、人件費は入りません。調達した資材は、原価証明書などで調達原価であることを示します。親会社と子会社の間(子会社の株式の50%以上を親会社が持つ、または役員の2分の1以上が同じ)での発注や、申請者が代表を務める法人での復旧も、自社復旧として扱われます。

井戸が使えなくなり、上水道を引き込みました。その工事費は対象ですか?

原則として、資産計上されているものは対象になります。ただし、元に戻す費用が上限です。

過去の災害の補助金で直した施設が、また被災しました。

令和8年熊本地震で被災していれば、この補助金を使えます。ただし、平成28年熊本地震のグループ補助金、令和2年7月豪雨のなりわい再建支援補助金、令和7年8月豪雨の被災中小企業者再建支援補助金などで直した施設を取り壊したり、設備を廃棄したりする場合は、財産処分の手続が要ることがあります。Q&Aでは、事前に相談することとされています。

クラウドファンディングで集めたお金は差し引かれますか?

差し引かれません。保険金や共済金は復旧費用から差し引かれますが、クラウドファンディングで調達した資金は補助対象経費から控除しません。

保険金をまだ請求していません。

保険金を請求できるのに、請求しないことにした物件は、補助の対象外になり、申請できません。申請の時点で受け取る額が決まっていなければ、実績報告のときにあわせて出します。保険金を受け取ったのに申告せず、補助金を多く受け取ったことが分かった場合は、不正受給として交付決定が取り消され、加算金を付けて返還を命じられます。

地震の前にまだ使い始めていなかった施設や、創業前の事業は対象になりますか?

対象になりません。被災した時点で事業を行っている必要があるため、創業前の事業者や、使い始める前(供用開始前)に被災した施設・設備は対象外です。

見積を頼む前に

規模を広げる・性能を上げる場合は、元に戻す工事(原状回復工事)の見積書が要ります。修繕(修理)できるのに建て替える(入れ替える)場合や、建替(入替)のほうが安いとして建て替える(入れ替える)場合は、修繕(修理)の見積書が要ります。どちらも、実際にやりたい工事の見積とは別に出します。1件あたり100万円(税込)以上の工事は、原則として2者以上から見積を取ります。見積を頼む段階で、この2つを業者さんに伝えておくと、あとで取り直す手間が減ります。書類の決まりは「くまもと事業者再出発支援補助金の申請方法と必要書類」の記事にまとめています。

出典・参考

Q&Aは随時更新されます。申請の前に、熊本県のページで最新の内容を確かめてください。

まとめ

くまもと事業者再出発支援補助金の対象は、地震で被災した事業用の施設・設備・車両を元に戻すための費用です。規模を広げる・性能を上げることもできますが、補助の上限は元に戻す費用までで、元に戻す工事の見積も別に要ります。仮復旧・家賃・逸失利益は対象外で、解体・がれき撤去・地盤改良は、現地での復旧に欠かせない範囲で対象になることがあります。

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