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このたびの地震で被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。事業の再建に使える補助金・融資の解説をまとめました。

新事業進出補助金の賃上げ要件は重い?届かないと返還はいくら【熊本】

「賃上げの約束を守れなかったら、補助金は全部返すのですか」。新事業進出補助金のご相談で、金額の次によく聞かれるのがこの質問です。結論から言うと、全額返還になるのは一部の場合だけですが、約束の中身は以前の制度より重くなっています。この記事では、熊本で新事業進出補助金を考えている事業者の方に向けて、いまの「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」第1回公募(公募要領1.3版、2026年9月28日更新)の賃上げの要件と、届かなかったときの返還を整理します。

この記事のポイント

  • 約束する数字は3つ。返還の定めがあるのは「一人当たり給与支給総額」と「事業場内最低賃金」の2つで、付加価値額には返還の定めがありません。
  • 一人当たり給与支給総額は年平均3.5%以上を複利で伸ばし、自分で決めた目標値で判定されます。
  • 届かなかったときは未達の割合に応じて一部を返還し、伸びがゼロ以下なら全額返還です。
  • 事業場内最低賃金は毎年の判定で、1年届かないごとに「補助金÷計画年数」を返還します。
  • 報告は補助事業が終わった年度の後から計6回続きます。

約束する数字は3つ。返還があるのは2つです

新事業進出補助金の3つの基本要件と、届かなかったときの扱いの一覧
出典:公募要領(第1回)1.3版・よくあるご質問

この補助金では、補助事業が終わったあとの3〜5年の事業計画期間について、3つの数字を約束します。1つ目は付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年平均4.0%以上の伸び、2つ目は従業員の一人当たり給与支給総額の年平均3.5%以上の伸び、3つ目は事業場内最低賃金を毎年、地域別最低賃金より30円以上高くしておくことです。どれも会社全体(事業場内最低賃金は補助事業を行う事業場)で判定され、補助事業の部門だけの数字ではありません。

このうち、届かなかったときに補助金の返還を求めるとされているのは、一人当たり給与支給総額(賃上げ要件)と事業場内最低賃金(事業場内最賃水準要件)の2つです。付加価値額は基本要件の1つですが、公募要領に未達を理由とした返還の定めはありません。とはいえ、後で説明するとおり、付加価値額が伸びたかどうかは返還が免除されるかの判断に使われます。

3.5%は複利で、自分で決めた目標値で判定されます

一人当たり給与支給総額を年平均3.5%で伸ばしたときの3年後・4年後・5年後の目安
出典:公募要領(第1回)1.3版・よくあるご質問をもとに当法人が計算

年平均3.5%は複利で計算します。5年計画なら単純に3.5%×5年=17.5%ではなく、毎年3.5%ずつ積み上げた水準が必要です。基準年度の一人当たり給与支給総額が300万円の会社なら、3年計画で約332.6万円(約10.9%増)、5年計画で約356.3万円(約18.8%増)が最低ラインの目安になります。

基準になるのは、申請時の数字ではなく「補助事業実施期間の終了時点が含まれる事業年度(基準年度)」の実績です。申請時に入れた数字は見込みで、基準年度の実績が確定した時点で改めて計算されます。給与支給総額に役員報酬は含まれません。また、一人当たりで見るため、従業員を増やして給与の総額を大きくするだけでは満たせません。給与支給総額の数え方は新事業進出・ものづくり補助金の給与支給総額の計算方法で詳しく説明しています。

もう1つ大事なのは、判定に使うのが申請時に自分で決めた目標値だということです。審査では基準値より高い目標値が評価されますが、最終年度の実績が3.5%以上でも、自分で決めた目標値に届かなければ要件を満たさないことになります。目標値は、交付申請までに全ての従業員または従業員代表者に表明する必要があります。

届かなかったときは、届かなかった割合だけ返します

一人当たり給与支給総額の目標に届かなかったときの返還額の計算例
出典:公募要領(第1回)1.3版をもとに当法人が計算

最終年度に一人当たり給与支給総額の目標値に届かなかった場合の返還額は、「補助金交付額×(1-最終年度の年平均成長率÷目標値)」で計算します。たとえば補助金1,500万円、目標値3.5%で、実績が年平均2.1%だった場合は、1,500万円×(1-2.1÷3.5)=600万円の返還です。目標値を4.0%にして実績が3.5%だった場合も、1,500万円×(1-3.5÷4.0)=187.5万円の返還になります。

伸びがゼロまたはマイナスだった場合は全額返還です。返還額は交付された補助金額が上限です。途中の年に目標を下回っても、最終年度の時点で達成していれば返還の対象にはなりません。

一方で、付加価値額が増加しておらず、かつ会社全体で事業計画期間の過半数の年度が営業利益赤字の場合や、天災など事業者の責めに負わない理由がある場合は、この一部返還は求めないとされています。ただし、目標値を従業員等に表明していなかった場合は別扱いで、交付決定の取消と補助金全額の返還になります。

事業場内最低賃金は毎年の判定です

事業場内最低賃金が1年届かなかったときの返還額の例(3年計画・補助金3,000万円)
出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 応募申請ガイド(第1回)

事業場内最低賃金は、補助事業を行う事業場で最も低い賃金(月給の人は時給に換算)です。平均ではなく、いちばん低い1人で判定します。事業計画期間中は毎年、事業化状況報告のときに賃金台帳などで確認され、地域別最低賃金より30円以上高くなっていない年があれば、その年ごとに「補助金交付額÷事業計画期間の年数」を返還します。

応募申請ガイドの例では、3年計画で補助金3,000万円の場合、1年届かなかっただけで1,000万円の返還になります。賃上げ要件が最終年度だけの判定なのに対し、こちらは毎年の判定なので、地域別最低賃金が上がる時期に合わせて毎年見直す必要があります。付加価値額が増加しておらず、かつ会社全体でその年度が営業利益赤字の場合や、天災などの場合は、返還を求めないとされています。

賃上げ特例を使うと、届かなかったときの返還が増えます

賃上げ特例を使うときに上乗せされる要件と、届かなかったときの返還
出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.3版

補助上限額を引き上げる「賃上げ特例」を使うと、一人当たり給与支給総額は年平均6.0%以上(基本の3.5%+2.5%)、事業場内最低賃金は地域別最低賃金+50円以上が要件になります。新事業進出枠なら、たとえば従業員1〜20人の会社の上限が2,500万円から3,000万円に上がります。各枠の補助上限額に達しない計画には使えません。

特例の要件はどちらか一方でも届かなければ、上限の引上げ分の補助金は全額返還です。さらに、特例の目標に届かないときは基本の賃上げ要件も未達となり、基本部分も未達の割合に応じて返還を求められます。上限が上がる分だけ、届かなかったときの負担も大きくなる仕組みです。

報告は6回。約束はそのあいだ続きます

補助事業の完了から事業化状況報告が続く期間の流れ
出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.3版・よくあるご質問

事業化状況報告は、補助事業を完了した日の属する年度の終了後を初回として、以降5年間にわたる計6回です。事業計画期間は3〜5年の範囲で申請者が決められますが、3年計画にしても報告は6回必要です。報告をしなかったり、虚偽の数値を報告したりすると、交付決定の取消と補助金の返還を求められ、以降の申請もできなくなります。

また、審査では補助事業の完了を待たずに行う「足下の賃上げ」も見られます。物価上昇率を上回る程度の賃上げが計画されていないと審査上大幅に不利になり、事務局のよくあるご質問では、参考値として2025年の消費者物価指数の総合指数が前年比3.2%の上昇と示されています。足下の賃上げは届かなくても返還の義務はありませんが、交付決定までに目標を従業員等に文書で表明することが必須です。

よくある質問

以前は「給与支給総額2.5%」と聞きました。変わったのですか?

変わりました。中小企業新事業進出補助金の第3回公募までは、給与支給総額の年平均2.5%以上と、一人当たり給与支給総額(都道府県の最低賃金の伸び率以上)の目標をそれぞれ立て、いずれかを達成すればよい形でした。第4回公募からは一人当たり給与支給総額の年平均3.5%以上の1本になり、いまの第1回公募も同じです。以前の説明のまま計画を立てないよう注意してください。

基準年度の従業員が辞めたら、要件は達成できなくなりますか?

達成できなくなるわけではありません。一人当たり給与支給総額の計算対象は、その年度に全月分の給与を受けた従業員で、基準年度と最終年度で同じ人である必要はありません。ただし、応募申請以降に故意または重過失で一人当たり給与支給総額を引き下げて要件を達成することは認められていません。

付加価値額の目標に届かなかったら、返還はありますか?

公募要領には、付加価値額の未達を理由とした返還の定めはありません。ただし、付加価値額が増加していないことは、賃上げの返還が免除されるための条件の1つになっています。付加価値額の計画も、賃上げの計画と同じように現実的な数字で立てておく必要があります。

補助金の一部を返すことになったら、建物はどうなりますか?

賃上げ要件の返還と、建物の処分の制限は別の話です。返還をしても、補助金で取得した建物や設備には法定耐用年数を過ぎるまで処分の制限が残ります。売却や担保の設定には事前の承認と納付が必要です。

出典・参考

まとめ

新事業進出補助金の賃上げ要件は、一人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上(複利)伸ばし、事業場内最低賃金を毎年地域別最低賃金+30円以上に保つことです。届かなければ、前者は未達の割合に応じて、後者は届かなかった年ごとに返還があり、表明をしていなかった場合や伸びがゼロ以下の場合は全額返還になります。目標値を高くすると審査では評価されますが、そのまま返還の物差しにもなるため、実際に払える賃金から逆算して決めることが大切です。申請の前に、公式サイトで最新の公募要領を確かめてください。

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