令和8年熊本地震で被災された皆さまへ

このたびの地震で被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。事業の再建に使える補助金・融資の解説をまとめました。

補助金の申請から入金までの流れ|採択されてもすぐに発注してはいけない理由

補助金は「申請して、通ったらお金が振り込まれる」ものではありません。採択のあとに交付申請、事業の実施、実績報告、検査があり、お金が入るのは事業が終わったあとです。この記事では、中小企業庁の補助金(小規模事業者持続化補助金、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金)を例に、手続きの流れを順に整理します。細かい手順や期限は補助金ごとに違うため、実際に申請するときは、その補助金の公募要領で確かめてください。

この記事は、以前に別々の記事でご紹介していた「申請までの4ステップ」「補助金を受け取る7ステップ」「採択後の落とし穴」「専門家に頼むメリット・デメリット」などを1本にまとめ、いまの公募要領にそって書き直したものです。

申請から入金までの10段階

段階やることここで気をつけること
1 補助金を選ぶやりたい投資に合う補助金を探し、公募要領を読みます対象者・対象経費・補助率・上限は補助金ごとに違います
2 GビズIDプライムを取る電子申請に使うアカウントを作ります書類を郵送して作る場合は最大1か月かかります
3 計画と見積をそろえる事業計画を書き、使う経費の見積を取ります持続化補助金は、商工会・商工会議所の事業支援計画書(様式4)も要ります
4 申請締切までに電子申請します書類がそろっていないと、審査の前に失格になります
5 採択審査を通ると採択の通知が届きますまだ発注・契約・支払はできません
6 交付申請・交付決定見積書などを出し、交付決定の通知を待ちます交付決定日から、ようやく事業を始められます
7 補助事業の実施発注・契約・納品・検収・支払をしますすべて補助事業実施期間の中で終わらせます
8 実績報告かかった経費と証拠書類を報告します期限までに出さないと交付決定が取り消されます
9 確定検査・請求・入金補助金額が確定したら請求し、振り込まれます報告の内容によっては、交付決定の額より少なくなります
10 その後の報告事業の効果や事業化の状況を報告します持続化補助金は1年後、新事業進出・ものづくり補助金は5年間

1〜4 申請まで

補助金は、何に投資したいかが先にあって使うものです。やりたいことが決まったら、合いそうな補助金の公募要領を読み、対象になるかどうか、どの経費が対象か、締切はいつかを確かめます。当法人のサイトでは、補助金の一覧に制度ごとのページをまとめています。

国の補助金の電子申請には、GビズIDプライムのアカウントが要ります。GビズIDのよくあるご質問では、マイナンバーカードを使うオンライン申請なら最短で即日、書類を郵送する申請なら、書類が届き不備がない場合で最大1か月以内に作成できるとされています。また、GビズIDのサイトでは、アカウントの有効期限が発行日から2年3か月とされているので、以前に作ったアカウントがある方は期限を確かめておきます。

事業計画は、ただの作文ではなく審査の対象です。書き方は補助金の事業計画書の書き方と、不採択になる理由にまとめました。あわせて、使う経費の見積を取っておきます。持続化補助金では、地域の商工会・商工会議所に「事業支援計画書」(様式4)を発行してもらう手続きもあり、その受付は申請締切より前に締め切られます。

5〜6 採択と交付決定

採択は「補助金を交付する候補に選ばれた」という段階です。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、採択された事業者を「補助金交付候補者」と呼んでいます。採択のあとに交付申請をして、事務局の審査を経て交付決定の通知が届き、ここで初めて補助事業を始められます。

交付決定までの期間の目安は、持続化補助金の公募要領に「採択発表から概ね1〜2か月かかる場合があります」と書かれています。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、交付申請を原則として採択発表日から遅くとも2か月後の日までに行う必要があり、期限までに申請がないと採択が取り消されます。採択された事業者向けのオンライン説明会に参加しない場合も、採択は無効になります。

7〜9 事業の実施から入金まで

交付決定のあとは、補助事業実施期間の中で発注・契約、納品、検収、支払までをすべて終わらせます。事業が終わったら実績報告書と証拠書類を出します。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のよくあるご質問では、補助事業の完了後30日以内(または補助事業完了期限日のいずれか早い日まで)に出すこととされています。

そのあと事務局の確定検査を経て補助金の額が確定し、確定の通知を受けてから請求(精算払請求)をして、ようやく振り込まれます。実績報告のときに要件を満たしていないと、交付決定の額より少なくなることや、交付決定が取り消されることもあります。

10 入金のあとも報告があります

補助金は、振り込まれて終わりではありません。持続化補助金は、補助事業の終了から1年後の状況を「事業効果および賃金引上げ等状況報告書」(様式第14)で報告します。これを出していないと、次に持続化補助金へ申請できません。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、補助事業を完了した年度の終了後を初回として、5年間にわたって事業化状況報告を出します(計6回)。

採択されても、まだ発注してはいけません

いちばん多いつまずきが、採択の通知を受けてすぐに発注や契約をしてしまうことです。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領には、次のように書かれています。

交付決定日より前に補助事業に係る製品の購入や役務の提供に係る契約(発注を含む)等した経費は、補助対象になりません。

よくあるご質問でも、交付決定前に発注(契約)した経費だけでなく、交付決定前に納品・検収や支払をした経費も対象外とされています。持続化補助金も、交付決定通知書に書かれた交付決定日から補助事業を始める仕組みです。「採択されたから、もう買ってよい」ではなく、「交付決定日から発注・契約・支払を始める」と覚えておいてください。

交付決定の前にしてはいけないことは、ほかにもあります。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、交付決定前に、採択された事業計画を変えることはできません。また、事業譲渡や個人事業からの法人成り、会社分割などで、交付申請をする権利をほかの人や会社に引き継ぐこともできません。採択のあとに法人を作ろうと考えている個人事業主の方は、特に気をつけてください。

補助金は後払いです

持続化補助金の公募要領には、「補助事業遂行の際には自己負担が必要となり、補助金は後払いです」と書かれています。補助金は、事業にかかったお金をいったん自社で支払い、実績報告と確定検査を終えてから受け取るものです。補助金の分も含めた全額を、先に自己資金や借入で用意しておく必要があります。

  • 課税事業者の場合、消費税分はあらかじめ補助の対象から外して申請します。
  • 採択されても、予算の都合などで希望した金額より減らされることがあります。
  • 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の審査では、補助事業をやり切れる財務状況か、金融機関などから十分に資金を調達できる見込みがあるかも見られます。

金融機関からの借入で準備する場合は、申請の段階から金融機関と話を進めておくと、採択後に慌てずに済みます。

書類は5年間保存し、買った設備は勝手に処分しません

持続化補助金の公募要領では、補助事業に関係する帳簿と証拠書類を、補助事業が終わった日の属する年度の終了後5年間保存することとされています。その間に会計検査院などの実地検査が行われることもあります。見積書、発注書、納品書、請求書、振込の記録、写真などは、補助事業を終えたあとも捨てずに残しておきます。

また、単価50万円(税抜き)以上の機械装置などは「処分制限財産」にあたり、補助金を受け取ったあとも一定の期間は、目的外の使用や譲渡、廃棄などが制限されます。処分するときは事前に事務局の承認が必要で、承認を得ずに処分すると、加算金付きで補助金の返還を求められる対象になります。

専門家に頼むかどうか

補助金は、事業者ご自身で申請することもできます。そのうえで専門家に頼むメリットは、公募要領の読み込み、対象経費の判断、書類どうしの数字のすり合わせ、締切から逆算した段取りを任せられることです。採択のあとの交付申請や実績報告、その後の報告まで続けて頼めるかどうかも、選ぶときの大事な点です。

一方で、頼むときに知っておいてほしいことがあります。

丸投げはできません

補助金は、事業者自身が考えた計画を支援するものです。持続化補助金の公募要領には、事業者自らが検討しているような記載が見られない場合や、自ら検討していなかったことが発覚した場合、「評価に関わらず不採択・交付決定取消となります」と書かれています。専門家は計画を整えるお手伝いはできますが、何をやりたいか、なぜやるのかは、事業者ご自身の言葉が必要です。

支援を受けたことと、その金額を申告します

持続化補助金では、商工会・商工会議所以外の第三者から支援を受けた場合、申請画面でその相手方と支援にかかる金額(着手金、成功報酬その他名目のいかんを問わず)を記載します。記載がないと、虚偽の報告として不採択・交付決定取消の対象になります。公募要領では、サービスの内容とかけ離れた「高額なアドバイス料金」を請求する業者への注意も呼びかけられています。

また、GビズIDのアカウントとパスワードを支援者に教えることは、GビズIDの利用規約に反する行為とされています。申請の入力をすべて代わりにやるので、IDとパスワードを教えてほしいという依頼には応じないでください。

報酬を受け取って申請書類を作れるのは、原則として行政書士です

行政書士法第19条では、行政書士または行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第1条の3に規定する業務(官公署に提出する書類の作成など。電子申請で作る電磁的記録を含みます)を行うことができないとされています(ほかの法律に別段の定めがある場合などを除きます)。「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言は、令和7年の改正法で加わり、2026年1月1日から施行されています。「コンサルティング料」「サポート料」といった名目でも、報酬を受け取って申請書類の作成を請け負うことはできない、ということです。

専門家に頼むときは、誰が書類を作るのか、報酬はいくらで、何に対して払うのか(着手金・成功報酬・採択後の手続き)を、書面で確かめてから頼むことをおすすめします。当法人の料金はサービス・料金に、ご依頼から申請までの流れはご依頼の流れに載せています。

よくあるご質問

不採択だったら、もう申請できませんか?

多くの補助金は公募が何回かに分けて行われ、次の回に計画を見直して申請し直せます。ただし、持続化補助金の公募要領には「採択審査結果の内容についての問い合わせには応じかねます」とあり、なぜ落ちたかを事務局に聞くことはできません。見直し方は事業計画書の書き方と、不採択になる理由をご覧ください。

補助金はいつ振り込まれますか?

事業を終えて実績報告を出し、確定検査で補助金の額が確定して、請求をしたあとです。申請や採択の時点では1円も入りません。事業が終わるまでの支払いは、すべて自社で立て替える前提で資金繰りを組みます。

採択されたら、すぐに設備を注文してよいですか?

いいえ。交付決定日より前に発注・契約・支払をした経費は、補助の対象になりません。採択の通知と交付決定の通知は別物です。交付決定通知書に書かれた交付決定日を確かめてから注文してください。

GビズIDは、いつ取ればよいですか?

申請を考えた時点で取っておくのがおすすめです。書類郵送で作る場合は最大1か月かかります。有効期限は発行日から2年3か月で、期限の3か月前・1か月前・2週間前に、登録したメールアドレスに通知が届きます。実績報告やその後の報告でもログインするので、期限切れにならないよう管理しておきます。

補助金で買った設備を、途中で売ってもよいですか?

単価50万円(税抜き)以上の機械装置などは処分制限財産にあたり、一定の期間は事務局の承認なしに売ったり捨てたりできません。承認を受けた場合でも、残っている価値などから計算した金額として、交付された補助金の全部または一部に相当する額を納めることがあります。

補助金のよくある誤解

補助金について、ご相談でよく出てくる誤解を整理します。細かい決まりは補助金ごとに違うので、ここでは公募要領に書かれている例で説明します。

補助金は返さなくてよいお金ですか?

原則はそうです。持続化補助金の公募要領には、「支払を受けた補助金については、原則として、融資のように返済の必要がありません」とあります。ただし続けて、収益納付や処分制限財産の処分によって補助金が減額されるなどの場合があるとも書かれています。次のような場合は、受け取ったあとでも返還を求められます。

  • 補助金で買った設備を、決められた期間内に売ったり、目的外に使ったり、廃棄したりした場合(処分制限財産)。承認を受けて処分しても、残存簿価などに応じた額を納めることがあり、承認を受けずに処分すると、交付決定の取消し・返還(加算金付き)の対象になります
  • 賃上げなど、申請で約束した要件を達成できなかった場合(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金や省力化投資補助金(一般型)では、未達の程度に応じた返還の決まりがあります)
  • 事業化状況報告などの、補助事業のあとの報告を出さなかった場合(たとえば事業承継・M&A補助金では、報告をしないと交付決定が取り消され、返還を求められます)
  • 不正に受け取った場合(下で説明します)

投資した金額の全額がもらえますか?

もらえません。補助金は、かかった経費のうち補助率の分だけを補助するものです。たとえば持続化補助金の補助率は2/3(賃金引上げ特例の赤字事業者は3/4)、省力化投資補助金(一般型)は中小企業で1/2です。残りは自社の負担で、しかも補助金は後払いなので、いったんは全額を自社で支払います。

申請すれば必ずもらえますか?

いいえ。多くの補助金には審査があり、採択されなければ受け取れません。採択されても、持続化補助金の公募要領には「予算の都合等により希望金額から減額される場合があります」とあり、実績報告の内容によって交付額が減ることもあります。

今すぐ資金が必要です。補助金で間に合いますか?

補助金は、事業を終えて実績報告と確定検査を経てから支払われる後払いです。今すぐの資金繰りには向きません。つなぎの資金が必要な場合は、融資と組み合わせて考えます。

不正に受け取るとどうなりますか?

持続化補助金の公募要領では、不正受給が行われた場合、補助金交付決定の取消・返還命令、不正の内容の公表などに加え、補助金適正化法にもとづいて「5年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処せられ、又はこれを併科されることがあります」とされています。事業承継・M&A補助金や省エネ補助金の公募要領では、取消しとなった額に年10.95%の加算金を加えて返還させることも定められています。

いくつかの補助金を一緒に使えますか?

別々の事業や経費なら、複数の補助金を使うことはあります。ただし、同じ経費に国の補助金を重ねて受けることはできず、補助金によっては、組み合わせそのものが禁じられている場合もあります。省力化投資補助金(一般型)の公募要領では、同じ事業で複数の補助金に採択された場合は、1つだけを選んで交付申請するよう求めています。

パソコンや家賃も補助の対象になりますか?

多くの補助金では対象外です。省力化投資補助金(一般型)の公募要領を例にとると、事務用のパソコン・プリンタ・スマートフォン・タブレットなどの汎用品、中古品、自動車などの車両、不動産の取得、家賃や光熱費、自社の人件費、関係会社への支払いなどが対象外とされています。何が対象になるかは補助金ごとに違うので、申請する補助金の公募要領で確かめます。

このページの内容は、小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>公募要領(第8版)、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領とよくあるご質問、GビズID よくあるご質問、行政書士法(e-Gov法令検索)にもとづいています。各補助金の詳しい内容は、小規模事業者持続化補助金と新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のページにまとめています。

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