小規模事業者持続化補助金〈一般型 通常枠〉の第20回で、補助上限が150万円上乗せになる「賃金引上げ特例」の要件が大きく変わりました。第19回までは「事業場内最低賃金を50円以上引き上げる」という要件でしたが、第20回は「従業員1人あたり給与支給総額を年平均3.0%以上増やす」という要件です。熊本でこれから第20回に申請する事業者の方に向けて、比べる期間、計算に入る人、出す書類、補助事業の期間と実績報告の時期を、公募要領に書いてあるとおりに整理しました。
この記事は、2026年10月17日時点で公開されている第20回の公募要領(第8版・2026年7月21日)にもとづいています。第20回の「参考資料」と「申請時によくあるご質問」は、事務局のページでまだ準備中です。公開されたら内容を足します。
この記事のポイント
- 第20回の賃金引上げ特例は、2027年4月から2028年3月までの12か月と、その前年同月の12か月を比べ、従業員1人あたり給与支給総額が年平均3.0%以上増えていることが要件です
- 「1人あたり給与支給総額」は、給与支給総額を従業員数で割ったものです。全員が一人ひとり3.0%上がっている必要はありません
- 計算に入るのは、比べるそれぞれの12か月で、全部の月に給与を受けた従業員です。代表者・役員・専従者は入りません
- 申請のときに賃金台帳を出す必要はありません。採択後、交付決定までに12か月分の賃金台帳を出し、実績報告でも12か月分を出します
- 特例を使う場合、補助事業の終了予定日は2028年3月31日に設定します。実績報告書の提出期限は2028年4月10日です
第19回と第20回で何が変わったか

第19回の賃金引上げ特例は、補助事業の終了時点で、事業場内最低賃金(パート・アルバイトを含めた、その事業場でいちばん低い時間あたりの賃金)が申請時より50円以上高いことが要件でした。申請のときに直近1か月分の賃金台帳を出し、実績報告のときにも終了時点の直近1か月分を出す形です。
第20回は、見るものが「いちばん低い人の時給」から「従業員1人あたりの給与支給総額」に変わりました。しかも、ある1か月の時点ではなく、12か月と12か月を比べます。そのため、補助事業の終了予定日を2028年3月31日に決めておく必要があり、書類を出す時期も変わっています。
補助上限の上乗せ額(150万円)と、赤字の事業者は補助率が3/4に上がる点は、第20回も同じです。赤字かどうかは、法人なら直近1期分の法人税申告書(別表一・別表四)の「所得金額又は欠損金額」、個人事業主なら直近1年間の確定申告書第一表の「課税される所得金額」がゼロ以下かで判断します。
比べる期間と「3.0%」の決まり

公募要領は、2027年4月1日から補助事業実施期限日(2028年3月31日)までの期間と、その前年同月の12か月を比べると定めています。つまり、2026年4月から2027年3月までの12か月が「前」、2027年4月から2028年3月までの12か月が「後」です。この「後」の12か月で、従業員1人あたり給与支給総額が年平均3.0%以上増えていることが要件です。公募要領は「年平均とは連続する12か月の平均のことを指します」と注記しています。
| 区分 | 期間 |
|---|---|
| 比べる前の12か月 | 2026年4月~2027年3月 |
| 比べる後の12か月 | 2027年4月~2028年3月 |
| 増やす割合 | 1人あたり給与支給総額を年平均3.0%以上 |
具体的には、申請者が自分で「1人あたり給与支給総額目標値」(3.0%以上引き上げる目標)を決め、採択後、交付決定までに全ての従業員または従業員代表者、役員に表明し、実績報告の時点でその目標値を達成している必要があります。表明のしかたは、採択発表のときに公開される「補助事業の手引き」で案内されることになっています。
給与支給総額に入るものは、給料、賃金、残業代、賞与などです。福利厚生費、法定福利費、退職金は入りません。この総額を従業員数で割ったものが「1人あたり給与支給総額」です。昇給や減給、残業時間の増減で給与が変わる従業員も計算の対象になるので、残業が減る見込みがあるときは、そのぶんも見込んで目標を立てる必要があります。
あわせて、比べる2つの12か月の間、支給している事業場内最低賃金が地域別最低賃金以上であることも求められます。
計算に入る人・入らない人

この特例でいう「従業員」は、非常勤を含みますが、代表者、役員、専従者は含みません。持続化補助金に申し込めるかどうかを決める「常時使用する従業員」とは数え方が違う、と公募要領ははっきり書いています。
計算に入るのは、比べる2つの12か月のそれぞれで、全部の月の給与を受けた従業員です。途中で採用した人や退職した人のように、ある期間の全部の月で給与を受けていない人は、その期間の計算から外します。産前・産後休業、育児休業、介護休業などで時短勤務をしている人は、計算から外すことができます。
パートタイムの従業員は、正社員の就業時間に換算した人数で数えます。公募要領の例では、正社員が1日7時間・週35時間の事業者で、1日3時間・週15時間のパートの方は0.42人(3÷7の小数点以下第3位を切り捨て)です。
注意したいのは、計算できる人がいなくなった場合です。比べるどちらかの期間で、計算の対象になる従業員がいない月があると、1人あたり給与支給総額を計算できないため、特例の対象外になります。申請のときは要件を満たしていても、実績報告までに従業員が退職するなどして計算できなくなったら、補助金は交付されません。従業員が少ない事業者ほど、1人の退職が結果を左右します。
いつ、何を出すか

第20回では、申請のときに賃金台帳や労働条件通知書を出す必要はありません。賃金台帳が必要になるのは、採択されたあとです。
| 時期 | やること・出すもの |
|---|---|
| 申請時 | 電子申請システムで「賃金引上げ特例の希望」を選ぶ。誓約・同意書(様式7)の該当箇所にチェック。赤字の事業者は、法人なら法人税申告書の別表一・別表四、個人事業主なら確定申告書第一表の写し |
| 採択後、交付決定まで | 「給与支給総額基準値算出表」に給与支給総額・従業員数などを入れて目標値を設定し、表明書を確認。採択発表日の属する月までの連続する12か月分の賃金台帳の写し。雇用条件(1日の所定労働時間・年間休日)が分かる書類の写し |
| 実績報告時 | 2028年3月31日を終点とする連続する12か月分の賃金台帳の写し。引上げ後の雇用条件が分かる書類の写し |
賃金台帳と雇用条件の書類は、役員と専従者を除く、補助事業を実施する場所の全従業員分が必要です。雇用条件の書類は、雇用契約書や労働条件通知書などです。
補助事業の期間と実績報告の時期

第20回の補助事業の期間は、交付決定日から2028年3月31日(金)までです。賃金引上げ特例を使う場合、公募要領は補助事業の終了予定日を、この2028年3月31日に設定するよう求めています。
| 項目 | 第20回 |
|---|---|
| 採択発表 | 2027年3月頃の予定 |
| 見積書等の提出期限 | 2028年2月29日(火) |
| 補助事業の期間 | 交付決定日から2028年3月31日(金)まで |
| 実績報告書の提出期限 | 2028年4月10日(月) |
特例を使わない場合は、期間の途中で補助事業(経費の支払いまで)が終われば、その日から30日を過ぎる日か、実績報告書の提出期限の、早いほうまでに実績報告を出します。一方、特例を使う場合は、実績報告で「2028年3月31日を終点とする12か月分」の賃金台帳を出すことになっています。設備の納品や支払いが早く終わっても、この12か月分がそろうのは2028年3月が終わってからなので、報告はそれ以降になります。特例を使うと、補助金が入るのは早くても2028年4月より後になると考えて、資金繰りを組んでください。
なお、第19回は、補助事業の期間が2027年6月30日まで、実績報告書の提出期限が2027年7月10日でした。第20回は、第19回よりも補助事業の期限が9か月遅くなっています。
達成できなかったときの扱い

賃金引上げ特例を希望して、通常枠と特例の要件を1つでも満たさない場合、補助金は交付されません。上乗せの150万円だけが減るのではなく、補助金の全体が交付対象外になる、と公募要領に書かれています。
さらに、賃金引上げ特例または賃金引上げ加点を受けて採択されたのに、申請した賃上げ要件を達成できなかった場合は、補助事業終了から1年後に出す様式第14(事業効果および賃金引上げ等状況報告書)で未達が報告されてから18か月の間、中小企業庁が所管する補助金に申請するとき、正当な理由が認められない限り大幅に減点されます。対象には、ものづくり補助金、事業再構築補助金、新事業進出補助金、持続化補助金などが並んでいます。災害で事業に著しい損失を受けた場合など、やむを得ない理由が認められたときに限り、減点は免除されます。
当法人では、特例を使うかどうかを決める前に、直近12か月の賃金台帳から1人あたり給与支給総額を出し、2028年3月までに退職しそうな人がいないか、残業が減る見込みがないかを一緒に確かめます。150万円の上乗せは大きいですが、要件を外すと補助金の全体が出なくなるので、数字で見込みが立つかどうかで判断します。
よくある質問
3.0%は、従業員全員がそれぞれ3.0%上がっている必要がありますか?
いいえ、要件は「従業員1人あたり給与支給総額」で見ます。1人あたり給与支給総額は、給与支給総額を従業員数で割ったものなので、一人ひとりの上がり幅ではなく、全体を人数で割った額が年平均3.0%以上増えているかで判断します。
申請のときに、賃金台帳や労働条件通知書は要りますか?
申請のときは要りません。申請時は、電子申請システムで特例を選び、誓約・同意書(様式7)にチェックするだけです(赤字で補助率3/4を希望する場合は、法人なら別表一・別表四、個人事業主なら確定申告書第一表の写しを出します)。賃金台帳と雇用条件の書類は、採択後から交付決定までの間と、実績報告のときに出します。
途中で辞めた人や、途中で入った人はどうなりますか?
比べる12か月のどちらかで、全部の月の給与を受けていない人は、その期間の計算から外します。外した結果、計算の対象になる従業員がいない月がある場合や、実績報告までに計算できなくなった場合は、特例の対象外になり、補助金は交付されません。
給与を払っているのが役員と専従者だけです。特例は使えますか?
代表者、役員、専従者は計算に入らないので、それ以外の従業員がいないと1人あたり給与支給総額を計算できず、特例の対象外になります。
特例を使わずに、賃金引上げ加点だけを狙うこともできますか?
できます。第20回の賃金引上げ加点は、同じ2つの12か月を比べて、1人あたり給与支給総額が年平均2.0%以上増えていることが要件です。ただし、加点の要件を満たさない場合も、交付決定後であっても補助金は交付されないと書かれています。特例を希望すると、この加点は自動で付きます。
出典・参考
- 小規模事業者持続化補助金〈一般型 通常枠〉第20回公募 公募要領 第8版(商工会議所地区)
- 同 公募要領 第8版(商工会地区)
- 同 第19回公募 公募要領 第6版(商工会議所地区)
- 同 第19回公募 申請時によくあるご質問(商工会議所地区)
まとめ
第20回の賃金引上げ特例は、「いちばん低い人の時給を50円上げる」から「1人あたり給与支給総額を年平均3.0%以上増やす」に変わり、2027年4月から2028年3月までの12か月と前年同月を比べる仕組みになりました。申請のときに賃金台帳は要りませんが、採択後と実績報告で12か月分を出します。
特例を使うと、補助事業の終了予定日は2028年3月31日になり、実績報告書の提出期限は2028年4月10日です。計算に入る人が退職すると要件を外れることもあり、外れると補助金の全体が出ません。申請する前に、直近の賃金台帳で数字を出してから決めることをおすすめします。
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ノーサイド行政書士法人は、熊本の補助金申請を支援している行政書士法人です(経済産業省の認定経営革新等支援機関)。第20回の持続化補助金で賃金引上げ特例を使うかどうか、賃金台帳をもとに一緒に検討します。
