令和8年熊本地震で被災された皆さまへ

このたびの地震で被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。事業の再建に使える補助金・融資の解説をまとめました。

「補助金で実質無料」「あとでキャッシュバック」の営業は何がだめ?【熊本】

「補助金を使えば実質無料で入れられます」「あとで代金の一部をキャッシュバックします」。システムや機械の営業で、こうした言葉を聞いたことがある方は多いと思います。結論から言うと、こうした売り方は、補助金の公募要領で補助金の目的に反する行為・不正な行為とされています。

この記事では、営業を受けたお客様と、補助金で商品を売る業者さんの両方に向けて、何がだめなのか、見つかったらどうなるのか、営業を受けたときにどこを見ればよいかを、デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)、省力化投資補助金、小規模事業者持続化補助金の公募要領と、補助金適正化法の条文にもとづいて整理します。

この記事のポイント

  • 自己負担を減らす・なくす売り方(値引き・キャッシュバック・ポイント・紹介料の名目での戻し)は、デジタル化・AI導入補助金、省力化投資補助金、持続化補助金、新事業進出補助金の公募要領で、補助金の目的に反する行為とされています
  • 見つかれば交付決定の取消し・補助金の返還(加算金付き)・名前の公表の対象になり、偽りや不正の手段で補助金を受けた場合は5年以下の拘禁刑・100万円以下の罰金の規定もあります
  • デジタル化・AI導入補助金では、業者が登録を取り消されると、その業者が関わった申請の交付決定も取り消されることがあります。営業に乗ったお客様も無関係ではありません
  • 売る側は、登録の取消し・名前の公表・次からの登録の拒否の対象になります。デジタル化・AI導入補助金では、「紹介料」「コンサル料」の名目でも、紹介の実態があっても、戻せば還元とされます
  • 補助金には自己負担があります。「実質タダなら入れたい」という設備投資は、補助金を使わないほうがよい、というのが当法人の考えです

「実質無料」「キャッシュバック」の営業とは

本来300万円のシステムを900万円の見積にして補助金450万円を受け取り、450万円をお客様に戻すと自己負担がゼロに見える仕組みのたとえ

よくあるのは、商品の値段を本来より高くした見積で補助金を申請し、補助金が入ったあとで、業者がお客様に代金の一部を戻す形です。お客様から見ると「自分のお金は出ていない」ので、「実質無料」「実質0円」とうたわれます。

たとえば、補助率2分の1の補助金で、本来300万円のシステムを900万円の見積にして申請したとします。お客様は900万円を支払い、補助金450万円を受け取り、さらに業者から450万円を戻してもらうと、手元から出ていくお金はゼロになります。業者の手元には450万円が残り、本来の300万円より150万円多く受け取っています。そのお金は全部、補助金から出ています。

本当なら、300万円のシステムに補助率2分の1で補助金が出るのは150万円で、残りの150万円はお客様の負担です。「実質無料」は、この自己負担を、値段の上乗せと後からの戻しで消しているだけです。戻し方は、振込や現金のほか、ポイント・クーポン、「紹介料」「コンサル料」の名目など、いろいろな形があります。

公募要領ではっきり禁止されている

デジタル化・AI導入補助金、省力化投資補助金、持続化補助金、新事業進出補助金の公募要領に書かれている還元の扱いの比較

どの補助金も、公募要領に同じ趣旨の決まりがあります。たとえばデジタル化・AI導入補助金2026(通常枠)の公募要領は、「補助事業者の自己負担額を減額又は無償とするような販売方法(形式・時期の如何を問わず、補助事業者に実質的に還元を行うもの。キャッシュバックを含む。)」を、補助金交付の目的に反する行為として取り扱うとしています。

補助金公募要領の扱い
デジタル化・AI導入補助金2026自己負担を減額・無償とする販売方法(キャッシュバックを含む)は目的に反する行為。不正な交付申請の具体例として、ポイント・クーポン、払い戻し、紹介料・コンサル料の名目での還流を挙げる
省力化投資補助金(カタログ注文型)自己負担を減額・無償とする販売方法は目的に反する行為。不適切な例に、製品を通常価格より特別に引き上げた価格で登録して補助金を受けることも挙げる
省力化投資補助金(一般型 第8回)発注先から実質的に還元を行う販売方法は目的に反する行為。ポイント・クーポン、払い戻し、資金の還流を不適切な例に挙げる
持続化補助金(一般型 通常枠 第20回)払い戻しで購入額を減額・無償とするものは補助対象外。キャッシュバックを含む還元は目的に反する行為とみなす
新事業進出補助金(第4回)「補助事業者の自己負担額を減額又は無償とするような販売方法」を不正な行為に挙げる。悪質な場合は事業者名・代表者名・不正内容を公表

デジタル化・AI導入補助金の事務局は、ホームページに「不正行為にご注意ください」というページを設け、「『キャッシュバック』『実質”無料”』などは不正行為の可能性があります」と呼びかけています。そこでは「ITツールを実質無償で提供する、減額する等の販売行為」を、「すべて不正であり、犯罪です」と書いています。

持続化補助金では、申請のときに「補助金受給額を不当に釣り上げ、関係者へ報酬を配賦する」といった不正な行為に加担していないことを宣誓します。宣誓に反すれば、交付決定の取消しに加え、補助金を受け取ったあとなら加算金を付けて返還を求められます。

見つかったらどうなるか

不正が見つかったときの交付決定の取消し、加算金付きの返還、公表、罰則の流れ

補助金は、補助金適正化法(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律)にもとづいて交付されています。補助金の交付の決定の内容や条件に違反すると、交付決定の全部又は一部を取り消されることがあり(17条)、すでに受け取った補助金は返還を命じられます(18条)。取消しによって返還を命じられたときは、受け取った日から納付の日までの日数に応じて、年10.95パーセントの割合で計算した加算金も納めます(19条)。事務局を通して交付される補助金では、各補助金の交付規程にも、交付決定の取消し・返還・年10.95パーセントの加算金の定めがあります(デジタル化・AI導入補助金は第27条〜第29条、持続化補助金は第23条など)。

さらに、偽りその他不正の手段で補助金の交付を受けた者は、5年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、又はその両方に処せられます(29条)。持続化補助金の公募要領も、不正受給があった場合は、交付決定の取消し・返還命令、不正の内容の公表などのほか、この罰則に処せられることがある、と冒頭の注意事項に書いています。

デジタル化・AI導入補助金と省力化投資補助金の公募要領は、こうした行為が疑われるときは、事前の連絡なく立入調査を行うことがあるとしています。調査で不当な申請の可能性が高いと判断されれば、交付決定が取り消され、関わった事業者の名前が公表されることもあり、同じ理由で取消しを受けた事業者からの次の申請は拒否されることがあります。

知らずに乗ったお客様も、無関係ではない

業者の登録が取り消されたときに、その業者から買ったお客様の交付決定も取り消されることがあることの説明

「業者に言われたとおりにしただけ」でも、補助金を受け取るのはお客様です。デジタル化・AI導入補助金の交付規程は、事務局がIT導入支援事業者の登録を取り消したときは、その事業者に係る全ての交付申請について交付決定を取り消すことができる、と定めています(第8条第3項。お客様の責めに帰する事由でない登録取消しの場合は、この限りでないとされています)。

事務局は、IT導入支援事業者の登録取消しをホームページで公表していて、2026年に入ってからも公表が続いています。公表の資料には、登録が取り消された事業者から支援を受けた補助事業者へ、事務局から今後の対応をメールで連絡していると書かれています。

すでに不正に関わってしまった場合のために、デジタル化・AI導入補助金の事務局は、補助金の自主的な返還の手続きを用意しています。不正と知りながら関わった場合は「自己申告書」を出し、加算金を付けて返還します。不正と知らずに関わった場合は「誓約書」を出して返還します。どちらも「不正行為にご注意ください」のページから様式を取れます。

売る側(業者)が気をつけること

補助金で商品を売る業者がやってはいけない、値引き・キャッシュバック・紹介料での戻し・値段の上乗せの4つ

補助金で自社の商品を売る業者さんにとって、「実質無料」は売りやすい言葉ですが、いちばん重い処分を受けるのは売る側です。デジタル化・AI導入補助金では、不当な申請に関わったIT導入支援事業者は、IT導入支援事業者とITツールの登録を取り消され、名前を公表され、そのあとの登録も拒否されることがあります。省力化投資補助金(カタログ注文型)でも、不当な申請に関わった販売事業者は、登録の取消し、事業者名・代表者名・不正の内容の公表の対象になります。

気をつけたいのは、名目を変えても同じだという点です。デジタル化・AI導入補助金の公募要領は、紹介料やコンサル料などの名目で資金を還流させることを不正な交付申請の例に挙げ、「仮に紹介等の実態を伴っていたとしても実質的還元に該当する」としています。お客様に「紹介料を払うので、実質ゼロになります」と言うのも、同じことです。

  • 補助金を使うお客様に、値引き・キャッシュバック・ポイント・クーポンで自己負担を減らさない
  • 「紹介料」「コンサル料」「協力金」などの名目で、お客様やお客様の関係者にお金を戻さない
  • 補助金を使うときだけ値段を上げない(カタログ注文型では、通常価格より特別に引き上げた価格での登録が不適切な例に挙げられています)
  • お客様のGビズIDを預かって、申請の手続きを代わりにしない(デジタル化・AI導入補助金では、補助対象者以外が申請手続きを代理で行うことも不正とされています)

お客様に補助金で買っていただくために、売る側が前もってしておく準備(事前の登録や、見積と発注の順番など)は、「自社の商品をお客様の補助金で買ってもらうには?売る側の準備を補助金ごとに【熊本】」で補助金ごとに説明しています。

「実質タダなら入れたい」なら、補助金は使わないほうがいい

補助金は自己負担と後払いが前提で、自分のお金を出してでも実現したいことがあるときに使うものだという考え方

持続化補助金の公募要領は、最初の注意事項で「補助事業遂行の際には自己負担が必要となり、補助金は後払いです」と書いています。補助金は、事業者が自分のお金も出して取り組む設備投資を、国が一部支える仕組みです。自己負担がゼロになる買い方は、そもそも補助金の考え方と合いません。

当法人では、「実質タダなら入れたい」というご相談には、補助金を使わないことをおすすめしています。その設備やシステムを入れて何を実現したいのか、自分のお金を払ってでも入れたいものなのかを先に考えるほうが、あとで後悔しません。補助金は、「これがあれば事業を伸ばせる。補助金があればなおありがたい」という方に使っていただきたいと考えています。

こんな営業を受けたら

「実質無料」の営業を受けたときに確かめる4つの点

次のどれかに当てはまる営業は、契約する前に立ち止まってください。

  • 「実質無料」「実質0円」「あとでキャッシュバック」「紹介料をお支払いします」と言われた
  • 見積の金額が、ほかの会社の見積や同じ商品の通常の値段より大きく高い
  • 「GビズIDとパスワードを教えてください。申請はこちらでやります」と言われた
  • 契約書や見積書と別に、口約束や別の書面で「戻し」の約束をしようとしている

デジタル化・AI導入補助金の業者かどうか、登録を取り消された業者でないかは、事務局のホームページの「ITツール検索」と「IT導入支援事業者の登録取消について」で確かめられます。事務局は、不正に関する情報の提供も受け付けています。

よくある質問

補助金の「実質無料」「キャッシュバック」の営業についてのよくある質問と答え

値引きそのものもだめですか?

補助金を使うお客様の自己負担を減らすための値引きは、だめです。公募要領は「自己負担額を減額又は無償とするような販売方法」を、形式・時期を問わず目的に反する行為としています。公募要領が不正の例に挙げているのは、ポイント・クーポンや払い戻しによって、購入額を証明する書類の金額と実際に支払われた金額が一致しなくなる形と、紹介料やコンサル料などの名目でお金を戻す形です。公募要領に「値引き」という言葉そのものは出てきませんが、補助金を使う方にだけ安くする、補助金の額に合わせて値段を下げる、といった売り方は、自己負担の減額とみられるおそれがあります。値段の決め方に迷うときは、契約の前にご相談ください。

補助金が入ったあとで戻すなら、ばれないのでは?

ばれないとは言えません。公募要領は、還元が疑われるときは事前の連絡なく立入調査を行い、関係者とみなされる者への調査も含むとしています。補助金の額が確定したあとでも交付決定の取消しの規定は適用され(補助金適正化法17条3項)、デジタル化・AI導入補助金では、契約書・請求書・振込受領書など補助事業に係る全ての書類を、事業完了の年度の終了後5年間保管し、検査に協力することが求められています。

知らずに契約してしまいました。どうすればいいですか?

デジタル化・AI導入補助金であれば、事務局が自主的な返還の手続きを用意しています。不正と知らずに関わった場合は「誓約書」を出して返還します。まだ補助金を受け取る前であれば、契約や申請の中身を一度見直すことをおすすめします。

出典・参考

まとめ

「補助金で実質無料」「あとでキャッシュバック」は、お客様の自己負担を値段の上乗せと後からの戻しで消す売り方で、デジタル化・AI導入補助金、省力化投資補助金、持続化補助金、新事業進出補助金の公募要領で、補助金の目的に反する行為とされています。紹介料やコンサル料の名目に変えても同じです。

見つかれば、交付決定の取消し、加算金付きの返還、名前の公表の対象になり、罰則の規定もあります。デジタル化・AI導入補助金では、業者の登録が取り消されれば、そこから買ったお客様の交付決定も取り消されることがあります。補助金は自己負担を前提にした仕組みです。自分のお金を出してでも入れたい設備やシステムかどうかを考えてから、補助金を使うかどうかを決めてください。

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