「そろそろ息子に継がせたいが、何から始めればいいか分からない」「後継者がいないので、このまま廃業するしかないのか」というご相談を、熊本の経営者の方からいただきます。事業承継は、相談先も使える制度もいくつかに分かれていて、全体が見えにくい手続きです。
この記事では、熊本で事業承継を考え始めた経営者の方向けに、承継の形、最初の相談先、2026年度に使える熊本県・国・熊本市の支援制度を整理します。制度の数字と締切は、2026年10月30日に取り直した各制度の原文にもとづいています。
この記事のポイント
- 事業承継の形は、親族への承継・従業員への承継・第三者への譲渡(M&A)の3つが基本です
- 最初の相談先は、熊本商工会議所5階の熊本県事業承継・引継ぎ支援センターです
- 熊本県の事業承継・後継ぎ支援事業補助金(事業承継準備枠)は、2026年11月30日(月)午後5時必着が締切です
- 国の事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠)16次公募は、2026年11月6日(金)17時が締切です
- 熊本市内の事業者には、事業承継に伴う融資の利子を補助する制度もあります
事業承継の形は3つ

事業承継の形は、大きく分けて、親族への承継、従業員への承継、第三者への譲渡(M&A)の3つです。熊本県事業承継・引継ぎ支援センターは、この3つに加えて、創業を目指す人と後継者のいない事業者を引き合わせる「後継者人材バンク」も扱っています。
| 承継の形 | 特長 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 親族への承継 | 経営理念や社風を引き継ぎやすい | 親族に適任者がいないことがある。相続や株式の分け方 |
| 従業員への承継 | 事業や社風をよく知る人が継げる | 株式を買い取る資金、個人保証や担保の引継ぎ |
| 第三者への譲渡(M&A) | 後継者がいなくても事業を引き継げ、雇用を守りやすい | 相手探しと条件交渉に時間がかかる。専門家への報酬 |
センターは、事業承継の準備には平均して3年から5年の期間が必要だとしています。どの形にするかを決める前の段階から、準備は始まっています。
最初の相談先は「熊本県事業承継・引継ぎ支援センター」

事業承継の最初の相談先は、熊本県事業承継・引継ぎ支援センターです。国(中小企業庁)が全国47都道府県に設置している相談先で、熊本県のセンターは熊本商工会議所が九州経済産業局から委託を受けて運営しています。
- 所在地:熊本市中央区横紺屋町10 熊本商工会議所ビル5階
- 電話:096-311-5030(平日9:00〜17:00)。メール・FAXの問い合わせフォームもあります
- 親族・従業員への承継:課題の整理、必要な専門家の紹介、税理士や中小企業診断士と連携した「事業承継計画」の策定支援
- 第三者への譲渡:譲受候補の紹介(全国のセンターと情報を共有)、センターに登録された民間のM&A支援会社の紹介
熊本市は、熊本商工会議所・熊本県商工会連合会・このセンター・日本政策金融公庫熊本支店などと、2024年6月19日に事業承継連携支援に関する協定(ツグKUMA)を結んでいます。2026年3月には、経営者向けの事業承継の個別相談会・グループ相談会も開かれました。
熊本県の補助金:事業承継・後継ぎ支援事業補助金

熊本県の事業承継・後継ぎ支援事業補助金(事業承継準備枠)は、事業承継の準備にかかる専門家の費用などを補助する制度です。熊本県内で事業承継を予定している小規模事業者等が対象で、受付は2026年11月30日(月)午後5時必着(郵送)までです。
| 項目 | 事業承継準備枠 |
|---|---|
| 補助率 | 補助対象経費の3分の2以内 |
| 補助上限額 | 50万円 |
| 受付期間 | 2026年3月26日(木)〜11月30日(月)午後5時必着 |
| 事業の実施期限 | 2027年1月15日 |
事業承継準備枠には2つの類型があります。
- 譲渡支援類型(譲り渡す側):親族内・従業員への承継では、株価などの企業価値の算定、課題分析などのコンサルティング、事業承継計画の策定を専門事業者に頼む費用。第三者への承継(M&A等)では、アドバイザリー契約の着手金・中間金・成功報酬、企業価値の算定、デューデリジェンス、不動産鑑定の費用など
- 後継ぎ支援類型(譲り受ける側):後継者・後継候補者の育成のための研修費と、事業承継に必要な専門家の費用
この補助金は、地域の商工会議所・商工会の支援を受けていることが要件です。申請の前と実績報告の前に、商工会議所・商工会に提出書類を確認してもらいます。公募要領は、社外の代理人だけで商工会議所・商工会への相談や計画書の支援を頼むことはできない、としています。また、補助の対象は交付決定通知書を受け取ったあとの発注・契約・支出に限られます。
同じ補助金の「後継ぎ応援枠」(後継者が行う販路開拓や生産性向上の取組。補助上限100万円)は、2次公募が2026年7月31日に締め切られています。
国の補助金:事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠)

親族や従業員に継ぐ予定の後継者が、承継をきっかけに設備投資などに取り組むときは、国の事業承継・M&A補助金の事業承継促進枠が使えます。16次公募の申請受付は2026年10月2日(金)から11月6日(金)17時までです。
- 補助率:小規模事業者等は補助対象経費の3分の2以内、それ以外は2分の1以内
- 補助上限額:800万円(賃上げ要件を満たす場合は1,000万円。800万円を超える部分の補助率は2分の1以内)
- 補助下限額:100万円(補助対象経費に補助率をかけた額が100万円を下回る申請は受け付けられません)
- 承継の時期:16次公募では、2026年11月6日から5年後の2031年11月5日までに事業承継を完了する予定であること
- 認定経営革新等支援機関に、事業承継の見込みについて確認を受けた計画書が必要です
- 経営権と所有権(株式・持分など)の両方が、今の経営者から後継者へ移ることが必要です
前の経営者に払う譲受の費用(土地・資産の購入費用など)は、この枠でも補助の対象になりません。枠ごとの細かい要件は、事業承継・M&A補助金のページにまとめています。
熊本市の利子補給と、事業承継税制

熊本市は、事業承継後1年以内の人(承継予定の人を含む)が熊本市の制度融資を使う場合に、借入金の利子の全額を最大3年間補助しています。対象の融資は、熊本市中小企業経営向上小口資金融資制度と熊本市創業サポート資金融資制度で、問い合わせ先は熊本市商業金融課(096-328-2424)です。
株式や事業用の資産を贈与・相続で引き継ぐときは、経営承継円滑化法にもとづく支援もあります。事業承継税制は、都道府県知事の認定を受けた非上場会社の株式などを後継者が贈与・相続で取得したとき、一定の要件のもとで贈与税・相続税の納税を猶予し、後継者の死亡など一定の場合に免除する制度です。熊本県では県庁が認定を行っています。
事業承継税制は、認定のあとも県への年次報告などが続き、期限を過ぎた申請や報告は受け付けられません。使うかどうかは、税額の試算と合わせて早めに決めます。なお、熊本県のページでは、特例承継計画(様式第21)の提出は2026年3月31日までとされていて、その期限はすでに過ぎています。
何から始めるか

事業承継は、締切のある補助金から逆算するのではなく、承継の形と時期を先に決めて、そこに使える制度を当てはめる順番で進めます。
- 会社の現状と、誰に・いつ継ぐかの考えを整理する(事業承継・引継ぎ支援センターなど)
- 承継の形(親族・従業員・第三者)と時期を決め、事業承継計画を作る
- 準備段階の専門家費用は熊本県の事業承継準備枠、承継をきっかけにした設備投資は国の事業承継促進枠、というように、使える制度の締切と要件を当てはめる
- 株式や資産の移し方と税金は、税理士の試算を取ってから決める
よくある質問
まだ後継者が決まっていなくても相談できますか?
できます。熊本県事業承継・引継ぎ支援センターは、まだどうするか決めていない段階の相談や、会社の価値を知りたいという段階の相談も受けると公式ページで示しています。
熊本県の補助金と国の補助金は、両方使えますか?
同じ内容の事業で両方を受けることはできません。熊本県の事業承継準備枠の公募要領は、国や県、市町村が助成するほかの制度と重複する事業を補助の対象外としています。
熊本県の事業承継準備枠は、行政書士に任せて申請できますか?
申請書類の作成を手伝うことはできますが、商工会議所・商工会への相談は事業者ご自身が行います。公募要領は、社外の代理人だけで商工会議所・商工会への相談や計画書の支援を頼むことはできない、としています。
出典・参考
- 熊本県事業承継・引継ぎ支援センター
- 熊本県事業承継・引継ぎ支援センター(親族内事業承継)
- 熊本県事業承継・引継ぎ支援センター(従業員承継)
- 熊本県事業承継・引継ぎ支援センター(第三者承継)
- 令和8年度(2026年度)熊本県事業承継・後継ぎ支援事業補助金のお知らせ(熊本県)
- 熊本県事業承継・後継ぎ支援事業補助金(事業承継準備枠)公募要領
- 事業承継・M&A補助金 事業承継促進枠 16次公募 公募要領
- 事業承継、M&Aの支援について(熊本市)
- 経営承継円滑化法に係る認定・確認(事業承継税制・金融支援)について(熊本県)
まとめ
熊本で事業承継を考え始めたら、まず熊本県事業承継・引継ぎ支援センターで、承継の形と時期を整理するところから始めます。2026年度は、熊本県の事業承継準備枠(11月30日必着)と、国の事業承継促進枠16次公募(11月6日17時)の締切が近づいています。
県の補助金は商工会議所・商工会の支援が要件で、国の事業承継促進枠は認定経営革新等支援機関の確認が要ります。どちらも準備に時間がかかるので、締切から逆算して早めに動き始めてください。
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ノーサイド行政書士法人は、熊本の補助金申請を支援している行政書士法人です(経済産業省の認定経営革新等支援機関)。事業承継に使える補助金の見立てや、事業承継促進枠の申請に必要な確認書のご相談をお受けしています。
