令和8年熊本地震で被災された皆さまへ

このたびの地震で被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。事業の再建に使える補助金・融資の解説をまとめました。

持続化補助金の賃上げ特例で従業員が辞めたら?第18・19回と第20回【熊本】

「賃金引上げ特例で採択されたのですが、時給を上げる予定だったパートさんが辞めることになりました。補助金はどうなりますか」

持続化補助金の賃金引上げ特例を使っている事業者の方から、実際によくいただくご質問です。賃金引上げ特例は、要件を1つでも満たさないと、上乗せ分だけでなく補助金の全体が交付されない仕組みなので、従業員の退職は大きな問題になります。

しかも、辞めたときの扱いは公募回によって違います。第18回・第19回は「事業場内最低賃金(いちばん低い時給)を申請時より50円以上上げる」形、第20回は「従業員1人あたり給与支給総額を増やす」形で、見ているものが違うからです。この記事では、補助事業の途中で従業員が辞めた場合と、代わりの人を雇った場合の扱いを、公募要領・補助事業の手引き・申請時によくあるご質問の原文から回ごとに整理します。

この記事のポイント

  • 第18回・第19回で、いちばん時給の低い人(事業場内最低賃金の対象者)が辞めたら、辞めた時点で次に低い人が新しい基準になり、その人の時給を補助事業の終了までに50円以上上げます
  • 代わりに新しく人を雇った場合の扱いは、第18回と第19回でよくあるご質問の答えが違います
  • 第18回・第19回とも、補助事業の終了時点で従業員がいないと特例の対象外になり、補助金の全体が交付されません
  • 第20回は、比べるそれぞれの12か月で全部の月に給与を受けた人だけで計算します。辞めた人はその期間の計算から外れ、計算できる人がいなくなると補助金の全体が交付されません
  • 辞めることが分かったら、その時点で、終了時点に必要な時給(第20回は1人あたりの額)を計算し直します

まず、自分の特例が第何回のものかを確かめる

持続化補助金の賃金引上げ特例の、第18回・第19回と第20回で見るものの違い

賃金引上げ特例は、第19回までと第20回で中身が変わりました。辞めた人の扱いもそれぞれの仕組みに合わせて決まっているので、最初に、採択された回の要件を確かめます。

回要件補助事業の実施期限
第18回補助事業の終了時点で、事業場内最低賃金が申請時より+50円以上2027年2月26日
第19回補助事業の終了時点で、事業場内最低賃金が申請時より+50円以上2027年6月30日
第20回2027年4月〜2028年3月の12か月と前年同月の12か月で、1人あたり給与支給総額を3.0%以上増やす2028年3月31日

事業場内最低賃金は、その事業場(店舗など)で、パート・アルバイトを含めていちばん低い時給(月給の人は時間あたりに直した額)のことです。第20回の仕組みは「【熊本】持続化補助金 第20回の賃金引上げ特例は何が変わった?3%と報告時期」で詳しく説明しています。

第18回・第19回:いちばん低い人が辞めたら、次に低い人が基準になる

事業場内最低賃金の対象者が辞めたときに、次に低い人が基準になる流れ

第18回・第19回の公募要領は、事業場内最低賃金の対象者が退職した場合は、補助事業の終了時点で次点の従業員を事業場内最低賃金の対象者とする、と定めています。よくあるご質問も、辞めた人の時給を基準にして上げればよいのかという質問に対して、退職された時点での次に低い事業場内最低賃金が基準になり、補助事業の終了までにそこから+50円以上の引き上げをするよう答えています(第18回 A6-7・第19回 A6-6)。

たとえば、申請のときにAさんの時給が1,050円でいちばん低く、次がBさんの1,080円だったとします。

申請のときAさんが辞めたあと
事業場内最低賃金の対象者Aさん(1,050円)Bさん(辞めた時点で1,080円)
終了時点で必要な時給1,100円以上(1,050円+50円)1,130円以上(1,080円+50円)

Aさんが辞めると、終了時点で見るのはBさんの時給です。Bさんの時給を1,100円にしただけでは、Bさん本人から見ると20円しか上がっていないことになります。

なお、第18回の公募要領と、第18回・第19回の補助事業の手引きは「次点の従業員を事業場内最低賃金の対象者として、申請時の+50円であれば特例適用」と書いていて、何に50円を足すのかが読み取りにくい書き方です。第19回の公募要領は「当該従業員の賃金を+50円以上引き上げている場合に特例適用」と書き、よくあるご質問も第18回・第19回とも次に低い人から50円以上としています。当法人では、どちらの回でも、次に低い人の時給から50円以上上げる(上の表なら1,130円以上)と考えて進めています。

また、どちらの回も、申請時点と補助事業の終了時点で、事業場内最低賃金が地域別最低賃金以上であることが必要です。熊本県の地域別最低賃金は2026年12月1日から1,092円になるので、12月1日以降に補助事業を終える場合は、50円の上げ幅とあわせて1,092円以上かどうかも見ます(くわしくは「熊本の最低賃金1,092円と持続化補助金(第18・19回)の賃上げ特例」で説明しています)。

新しく人を雇ったら:第18回と第19回で答えが違う

事業場内最低賃金の対象者が辞めて新しく人を雇ったときの、第18回と第19回の違い

辞めた人の代わりに新しく人を雇った場合、誰を事業場内最低賃金の対象者にするかについて、よくあるご質問の答えは回によって違います。

回よくあるご質問の答え
第18回(A6-14)退職時点で、次点の従業員(申請時の事業場内最低賃金の対象者の次に金額が低い従業員)を対象とする
第19回(A6-13)申請時の事業場内最低賃金と同額で雇った新しい従業員を対象とする。同額の人がいなければ、次点の従業員を対象とする

第19回で、申請時のAさんと同じ時給で新しい人を雇った場合は、その新しい人の時給を終了までに+50円以上にすることになります。第18回のよくあるご質問は、新しく雇った場合でも、次点の従業員(申請時に2番目に低かった人)を対象とする、と答えています。同じ「代わりに雇った」でも、誰の時給をいくらにするかが変わるので、採用の前に回を確かめてください。

誰もいなくなったら、補助金の全体が出ない

従業員がいなくなったときに賃金引上げ特例の対象外になり、補助金の全体が出なくなる関係

第18回・第19回の補助事業の手引きは、申請時点・補助事業の終了時点において、従業員がいない場合は、本特例の対象外と定めています。従業員が1人だけの事業者で、その人が辞めて終了時点までに誰も雇わなければ、特例の要件を満たせません。なお、申請時点で特例の要件を満たしていない場合は、通常枠として審査されることもなく、要件不備で不採択になります(第18回 A6-8・第19回 A6-7)。

そして、賃金引上げ特例を希望した場合、通常枠と賃金引上げ特例の要件を1つでも満たさないと、補助金は交付されません。特例による上乗せ部分だけでなく全体が交付対象外です(公募要領・手引き)。よくあるご質問は、補助事業の終了時点で要件を満たしていることが確認できない場合は、交付決定後であっても補助金を交付しないとし、ただし天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は交付されることもある、としています(第18回 A6-15・第19回 A6-14)。

なお、事業場内最低賃金の算定の対象には、日々雇い入れられる人、2か月以内の期間を定めて雇われる人、季節的業務に4か月以内の期間を定めて雇われる人(所定の期間を超えて引き続き雇われている人を除く)は入りません。第19回では、試用期間中の人、会社役員、同居の親族従業員も入らないとされています(第19回 A6-5)。当法人では、短期の人だけが残る場合は、事業場内最低賃金を計算できる人がいなくなり、要件を満たせないおそれがあると考えています。

第20回:辞めた人は、その12か月の計算から外れる

第20回の賃金引上げ特例で、辞めた人が比べる12か月の計算から外れるしくみ

第20回の公募要領は、1人あたり給与支給総額の計算に入れる従業員を、比べる2つの12か月のそれぞれで全月分の給与等の支給を受けた従業員とし、中途採用や退職などで全月分の支給を受けていない従業員は、その期間の計算から外すと定めています。よくあるご質問も、2つの12か月で比べる従業員は同じ人である必要はなく、それぞれの12か月で全月分の給与を受けた人を対象にする、としています(A6-5)。

つまり、2027年4月〜2028年3月の途中で辞めた人は、後の12か月の計算から外れます。前の12か月(2026年4月〜2027年3月)に全部の月の給与を受けていれば、前の12か月の計算には入ります。計算のしくみ上、給与の高い人が辞めると後の12か月の1人あたりの額が下がり、要件に届きにくくなります。

退職で計算できる人がいなくなった場合(算定対象者が0人の月がある場合)の扱いは、「【熊本】持続化補助金 第20回の賃金引上げ特例は何が変わった?3%と報告時期」で説明しています。

辞めることが分かったら、その時点で計算し直す

従業員が辞めると分かったときに確かめる順番

第18回・第19回の補助事業の手引きでは、補助事業期間中に従業員が退職などの理由で要件を満たせないことが見込まれた場合は、すぐに補助金事務局に申し出ることになっています。また、実績報告の入力画面では、申請や交付申請のときに登録した最低賃金の労働者がいまも在籍しているかどうかを選んでから、事業場内最低賃金に当たる人を入力する形になっています(第18回 申請システム操作手引き 実績報告・精算払請求)。

当法人では、従業員が辞めると分かった時点で、次の順に確かめています。

  1. 採択された回(第18回・第19回・第20回)と、補助事業の終了予定日
  2. 第18回・第19回なら、辞めたあとで次に低い人は誰か、その人の辞めた時点の時給と、終了時点で必要な時給(その人の時給+50円と、地域別最低賃金の高いほう)
  3. 第20回なら、辞めた人を外したあとの後の12か月で、1人あたり給与支給総額の見込み
  4. 代わりの人を雇うなら、その人が計算に入るかどうか(第19回の同額採用、第20回の全月分の給与など)

辞めた月から終了までの期間が短いほど、次の人の時給を上げる時間がなくなります。賃金台帳と終了予定日を並べて、早めに数字を出すことをおすすめしています。

よくある質問

辞めたのがパートやアルバイトの人でも、同じ扱いですか?

同じです。第18回・第19回の事業場内最低賃金には、アルバイト・パートの給料も含まれます(第18回 A6-6・第19回 A6-5)。ただし、日々雇い入れられる人や2か月以内の期間を定めて雇われる人などは、もともと算定の対象に入りません。

第18回・第19回で、辞めた人の時給を基準にして上げれば足りますか?

足りません。よくあるご質問は、辞めた人の時給ではなく、退職した時点で次に低い人の時給が基準になり、補助事業の終了までにそこから+50円以上上げるよう答えています(第18回 A6-7・第19回 A6-6)。

天災で従業員が辞めざるを得なかった場合も、補助金は出ませんか?

出ることがあります。よくあるご質問は、終了時点で要件を満たしていることが確認できない場合は交付しないとしたうえで、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は交付されることもある、としています(第18回 A6-15・第19回 A6-14)。

出典・参考

まとめ

第18回・第19回の賃金引上げ特例では、いちばん時給の低い人が辞めると、辞めた時点で次に低い人が基準になり、その人の時給を補助事業の終了までに50円以上上げます。代わりに人を雇ったときの扱いは第18回と第19回で違い、従業員が誰もいなくなると特例の対象外です。

第20回は、比べるそれぞれの12か月で全部の月に給与を受けた人だけで計算するので、辞めた人はその期間から外れ、計算できる人がいなくなると補助金の全体が出ません。どの回でも、辞めることが分かった時点で要件を計算し直すことが大切です。

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ノーサイド行政書士法人は、熊本の補助金申請を支援している行政書士法人です(経済産業省の認定経営革新等支援機関)。賃金引上げ特例で採択されたあとに従業員の入れ替わりがあった場合も、賃金台帳をもとに、終了時点で必要な時給や1人あたり給与支給総額を一緒に計算します。

制度の概要と当法人のサポートは「小規模事業者持続化補助金」のページに、料金は「サービス・料金」のページにまとめています。

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