新事業進出補助金や事業再構築補助金で実績報告を出すと、確定検査(実績報告後の現地調査)があります。事務局の指示に従って、資料の準備と立ち会う人の日程調整をします。初めて受ける事業者の方からは、「当日は誰がいればいいのか」「何を出せばいいのか」というご質問をよくいただきます。
この記事では、確定検査の当日に向けた準備を、新事業進出補助金の補助事業の手引き・実績報告ガイド・交付規程と、事業再構築補助金の補助事業の手引きをもとに整理します。検査の種類(中間検査・確定検査・実地検査)や、補助金で買った設備を既存の事業に使ったときの扱いは「補助金の現地調査(実地検査)では何を見られる?支払い・設備・使い方【熊本】」で説明しているので、あわせてお読みください。
この記事のポイント
- 確定検査は、実績報告のあとに書類の審査とあわせて行われる調査です。新事業進出補助金の手引きは「原則現地で」、事業再構築補助金の手引きは「必要に応じて」事業実施場所を訪問するとしています
- 新事業進出補助金では、検査を受ける人(受検対応者)は補助事業者の役員か従業員に限られます
- 見られるのは、建物・設備・システムが交付決定の内容どおりにあるか、支払いが期間内に終わっているか、補助事業にだけ使っているか、です。帳簿や物件が確認できない分は補助の対象になりません
- 補助金で作ったホームページやチラシは、補助事業のPRのためのものとして、期間内に公開し、「新事業進出管理No.」を表示し、実績報告でURLとスクリーンショットを出します
- 検査が終わって補助金が入ったあとも、5年間・計6回の事業化状況報告があり、新しい事業の売上を分けて報告します
確定検査は、実績報告のあとに行われる

新事業進出補助金の交付規程は、実績報告を受けたら、報告書などの書類の審査と、必要に応じて現地調査等を行い、補助事業の実施結果が交付決定の内容に合っていると認めたときに補助金の額を確定する、と定めています(第18条第1項)。補助事業の手引きは、これを「実績報告後の現地調査」と呼び、書類の審査と原則現地での調査等を行うと説明しています。
事業再構築補助金の手引きは、実績報告書の内容にもとづいて書類を検査し、建物や改修の詳細、機械設備の入手・支払、補助事業の成果を実際に確かめるため、必要に応じて事務局が事業実施場所を訪問するとしています。新事業進出補助金は「原則現地で」、事業再構築補助金は「必要に応じて」訪問、と書き方が違います。
また、新事業進出補助金の手引きは、事務局等による検査について、補助事業に関して予告なく実施することがあり、検査員の指示に従って協力する必要があるとしています。日程の連絡を待つだけでなく、ふだんから書類と設備を見せられる状態にしておくことが大切です。
確定検査で問題がなければ補助金の額が確定し、確定通知が届きます。新事業進出補助金はGビズIDに登録したメールアドレスと担当者のメールアドレスあてに、事業再構築補助金はJグランツのマイページで確認する形です。そのあとに精算払の請求をして、補助金が振り込まれます。つまり、確定検査を受けないと補助金は入りません。
立ち会うのは、事業の中身を説明できる役員か従業員

新事業進出補助金の手引きは、確定検査では事務局の指示に従って資料の準備と受検対応者の日程調整をすること、そして受検対応者は補助事業者の役員又は従業員に限ることを定めています。申請や実績報告を外部の支援者に手伝ってもらっていても、検査を受けるのは事業者ご自身です。
当日は、新しい事業を始めた理由と中身を話せる代表者に加えて、建物や設備・システムを実際に使っている担当者、支払いと帳簿が分かる経理の担当者がそろっていると、聞かれたことにその場で答えられます。当法人では、日程の連絡が来た段階で、誰がどの説明を受け持つかを決めておくことをおすすめしています。
見られるもの①:建物・設備・システムが計画どおりにあるか

確定検査で確かめられるのは、補助事業の実施結果が交付決定の内容(計画変更の承認を受けたときは、その承認された内容)に合っているかです(新事業進出補助金 交付規程第18条第1項)。事業再構築補助金の手引きは、補助の対象になるのは、補助事業の期間中に契約(発注)から支払までを終えた経費のうち、使用実績があり、補助事業にのみ使用したものだとしています。
このため、当日は次のような点を見られます。
- 建物・改修:申請した場所で、交付決定を受けた内容のとおりに工事がされているか。事業再構築補助金の手引きは、確定検査で「建物及び改修等の詳細」を実際に確認するとしています
- 機械装置:納品書などに書かれた型番のものが入っているか(実績報告ガイドは、型番の一致が分かるアップの写真を求めています)。新事業進出補助金では、機械装置などの補助対象物に「新事業進出管理No.」(例:機-1)のラベルを貼るよう実績報告ガイドが求めています。番号は、実績報告で証拠書類に付ける番号とそろえます
- システム・ECサイト:入れただけでなく、実際に使っているか。実績報告ガイドは、システムの写真を出せない場合は、実地検査やオンライン会議で実際のシステムを画面に映しながら説明してもらう、としています
新事業進出補助金の実績報告で使う写真は、撮影の日時と位置が記録されるアプリ(ロケトラBiz)で撮り、実績報告のときにURLを出します。実績報告ガイドは、確定検査のときに事務局がそのURLから撮影データを確かめるとしています。
また、新事業進出補助金の「補助事業の完了」は、建物の建設や設備の導入が終わっただけでは足りず、申請のときに入力したスケジュールの実施内容がすべて終わっていることが必要です。事業に許認可が要る場合は、その許認可を取ったうえで事業化していることも求められます(実績報告ガイド)。
見られるもの②:支払いと帳簿を、原本でたどれるか

新事業進出補助金の交付規程は、補助対象物件や帳簿類の調査ができない場合など、交付決定の内容に合わないときは、その物件などに係る金額は補助の対象にならないと定めています(第18条第1項)。手引きも、取得財産や帳簿類の確認ができない場合、その財産などの金額は補助対象にならないとしています。事業再構築補助金の手引きは、確定検査の際に経理証拠書類の原本が確認できない場合は補助対象にならないとしています。
新事業進出補助金の手引きは、見積依頼日から補助事業終了日まで、経理証拠書類の日付の整合性がとれている必要があり、とれない経費は補助対象外になる場合がある、としています。証拠書類の並べ方と保存の期間は「補助金の現地調査(実地検査)では何を見られる?」にまとめています。
さらに新事業進出補助金の手引きは、中小機構が補助事業の適正な遂行のため必要と認めたときは、補助事業の取引先(請負先・委託先・発注先や、相見積もりを取った先も含む)にも現地調査等を行うことがある、としています。発注先とのやりとりの控えも残しておいてください。
ホームページやチラシで気をつけること

新事業進出補助金の手引きは、補助事業で取得した財産は原則として専ら補助事業に使用する必要があり、「専ら補助事業に使用」とは、新たに取り組む事業として事業計画書に書いた事業にだけ使うことだ、と説明しています。過去から行っている既存の事業に使う場合は、補助金の対象外として扱われます。
当法人では、ホームページも同じ考え方で見ています。補助金で作るウェブサイトの経費は、新事業進出補助金の手引きで「補助事業のPR等に係るウェブサイト」に係る経費(広告宣伝・販売促進費)とされ、補助事業の期間内に公開されることが必要です。実績報告ではウェブサイト・ECサイトのURLとスクリーンショットを出します。また、ホームページやチラシなどの作成物には「新事業進出管理No.」の表示を入れるよう、実績報告ガイドが求めています(SNSの投稿やWeb広告などは、掲載物そのものへの表示は必須ではなく、スクリーンショットに画像編集で管理No.を入れて出します)。
当法人では、確定検査の前にホームページを開いて、トップページや商品のページが、新しい事業の商品・サービスの説明になっているかを一緒に確かめています。既存の事業の案内ばかりになっていると、補助事業のためのサイトだと説明しにくくなるからです。
検査のあと:5年間の事業化状況報告で、新しい事業の売上を分ける

確定検査が終わり補助金が入っても、手続きは続きます。新事業進出補助金では、補助事業を完了した日の属する年度の終了後を初回として、以降5年間にわたる計6回、事業化状況・知的財産権報告書を出します(手引き・交付規程第25条)。報告が行われない場合や虚偽の数値を報告した場合は、交付決定を取り消し、補助金の返還などを求めるとされています。
新事業進出補助金の手引きは、この報告で直近1年間の事業化状況や付加価値額状況、賃金引上げ状況などを報告するとしています。先に始まった事業再構築補助金の事業化状況報告のマニュアルを見ると、会社全体の総売上高とは別に、補助事業で事業化した製品・サービスの販売金額(売上額)と、新規事業の原価を入力する形です。原価には「原価総額×◯%」「当該事業売上比率◯%×原価総額」のように、すべての項目に算出の根拠を書くよう求めています。
そのため、新しい事業の売上と、今までの事業の売上を、どこで分けるかを先に決めておく必要があります。たとえば、同じ商品を新しく作ったネット販売と、前からの取引先への卸の両方で売っている場合、どちらの売上として数えるかです。手引きや交付規程に、売り方ごとの線引きの決まりは書かれていないので、事業計画書に書いた新しい事業の範囲にそって自社で線を引き、確定検査のときにも、その後の報告のときにも、同じ説明ができるようにしておきます。当法人では、売上を分ける基準を確定検査の前に一緒に決め、帳簿の上でも分けて記録できる形にしておくことをおすすめしています。
取得した財産の管理(善良な管理者の注意をもって管理すること・第23条)や、単価50万円(税抜)以上の処分制限財産を処分するときに事前の承認が要ること(第24条)も、検査のあとにずっと続く決まりです。目的外使用と処分制限財産については「補助金の現地調査(実地検査)では何を見られる?」で詳しく書いています。
よくある質問
申請を手伝ってくれた支援者だけで、確定検査に対応してもらえますか?
新事業進出補助金では、できません。手引きは、確定検査の受検対応者を補助事業者の役員又は従業員に限っています。事業者ご自身が、事業の中身と支払いを説明できるようにしておきます。
確定検査で、設備の一部が確認できなかったらどうなりますか?
確認できなかった物件の金額は、補助の対象になりません。新事業進出補助金の交付規程は、補助対象物件や帳簿類の調査ができない場合など、交付決定の内容に合わないときは、その物件などに係る金額は補助の対象にならないと定めています(第18条第1項)。
相見積もりを取っただけの会社にも、事務局から連絡が行くことはありますか?
ありえます。新事業進出補助金の手引きは、中小機構が補助事業の適正な遂行のため必要と認めたときは、取引先(請負先・委託先・発注先・相見積もり先も含む)に現地調査等を行うことができ、補助事業者はその調査に必要な措置を講じる、としています。
確定検査が終わったら、帳簿や証拠書類は捨ててもよいですか?
捨てないでください。新事業進出補助金の交付規程は、証拠となる書類を報告に係る年度の終了後5年間保存することを求めています(第17条第4項)。事業化状況報告の期間にも、会計検査院や事務局が抜き打ちで実地検査に入ることがあります(手引き 4-3-3)。くわしくは「補助金の現地調査(実地検査)では何を見られる?」で説明しています。
出典・参考
- 中小企業新事業進出補助金 補助事業の手引き(第1.8版・2026年8月17日)
- 中小企業新事業進出補助金 実績報告ガイド(第1.7版・2026年10月16日)
- 中小企業新事業進出促進補助金 交付規程
- 事業再構築補助金 補助事業の手引き<第12・13回>
- 事業再構築補助金 事業化状況報告 操作マニュアル
まとめ
確定検査は、実績報告のあとに書類の審査とあわせて行われる調査で(新事業進出補助金は原則として現地、事業再構築補助金は必要に応じて訪問)、これを経ないと補助金の額は確定せず、入金もされません。新事業進出補助金では、検査を受けるのは役員か従業員に限られるので、事業の中身・設備の使い方・支払いを、社内の人が説明できるようにしておきます。
当日に見られるのは、建物・設備・システムが交付決定の内容どおりにあって補助事業に使われているか、支払いを原本でたどれるか、です。ホームページやチラシは、補助事業のPRのものとして期間内に公開し、管理No.を表示しておきます。検査のあとも5年間・計6回の事業化状況報告が続くので、新しい事業の売上をどこで分けるかを、確定検査の前に決めておくと後が楽になります。
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ノーサイド行政書士法人は、熊本の補助金申請を支援している行政書士法人です(経済産業省の認定経営革新等支援機関)。新事業進出補助金・事業再構築補助金の実績報告から確定検査の準備、事業化状況報告まで、続けてお手伝いしています。
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