熊本県の地域別最低賃金が、2026年12月1日から時間額1,092円に上がります。持続化補助金の第18回・第19回で賃金引上げ特例を使っている事業者の方からは、「申請のときより50円上げる予定だったが、それでは足りなくなるのか」というご質問をいただきます。
結論から書きます。第18回・第19回の賃金引上げ特例で補助事業の終了時点に必要な時給は、「申請時の事業場内最低賃金+50円」と「終了時点の地域別最低賃金」の高いほうです。補助事業を2026年12月1日以降に終える場合は、1,092円以上にしておくのが安全で、申請時の額によっては、50円上げるだけでは足りません。
この記事では、補助事業の手引き・公募要領の原文と、熊本労働局の公表をもとに、上げる時給の出し方と、どの時点の最低賃金で見るのかを説明します。
この記事のポイント
- 第18回・第19回の賃金引上げ特例は、補助事業の終了時点で、事業場内最低賃金が申請時より+50円以上であることが要件です
- それとは別に、申請時点と補助事業の終了時点で、事業場内最低賃金が地域別最低賃金以上であることも求められます
- 熊本県の地域別最低賃金は、2026年1月1日から1,034円、2026年12月1日から1,092円です
- 手引きが地域別最低賃金と比べる時点として書いているのは、実績報告の日ではなく「補助事業の終了時点」です。第18回の実施期限は2027年2月26日、第19回は2027年6月30日で、どちらも12月1日より後なので、12月1日以降に終えるなら1,092円以上にしておくのが安全です
- 要件を1つでも満たさないと、上乗せ分だけでなく補助金の全体が交付されません
必要な時給は「申請時+50円」と「地域別最低賃金」の高いほう

第18回・第19回の補助事業の手引きは、賃金引上げ特例の要件を「補助事業の終了時点において、事業場内最低賃金が申請時の事業場内最低賃金より+50円以上であること」としています。事業場内最低賃金は、その事業場で、パート・アルバイトを含めていちばん低い時給(月給の人は時間あたりに直した額)です。
同じ手引きは、注意事項として「申請時点及び補助事業終了時点において、支給している事業場内最低賃金が、地域別最低賃金以上である必要があります」とも書いています。さらに、申請時点と補助事業の終了時点で、支給している事業場内最低賃金が地域別最低賃金を下回っている場合は、補助金の交付は行わない、と念を押しています。
つまり、終了時点の事業場内最低賃金は、次の2つを両方満たさなければなりません。
- 申請時の事業場内最低賃金+50円以上
- 終了時点の地域別最低賃金以上
2つのうち高いほうが、実際に上げる必要のある時給です。どちらも「以上」なので、ちょうどの額で要件を満たします。
熊本の地域別最低賃金は、2026年12月1日から1,092円

熊本労働局は、熊本県最低賃金の改正決定を行い、令和8年(2026年)10月5日に官報で公示しました。熊本県最低賃金は令和8年12月1日から時間額1,092円です。厚生労働省の令和8年度の全国一覧でも、熊本は1,092円(改定前は1,034円)、発効日は令和8年12月1日となっています。いまの1,034円は、熊本労働局が令和7年10月2日に公示し、令和8年(2026年)1月1日から効いている額です。
最低賃金法は、地域別最低賃金の改正の決定は公示の日から30日を経過した日(決定でそれより後の日を定めたときはその日)から効力を生じるとし(第14条第2項)、使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないと定めています(第4条第1項)。補助金を使っているかどうかに関わらず、12月1日からは、最低賃金の減額の特例許可(第7条)を受けた場合などを除き、1,092円を下回る時給にはできません。
判断の時点は「補助事業の終了時点」

手引きが地域別最低賃金と比べる時点として書いているのは、「申請時点」と「補助事業の終了時点」です。実績報告を出す日ではありません。
補助事業の終了は、手引きでは、補助事業者が自ら定める事業完了日(最長で実施期限日)までに、取組を終了させ、かつ補助事業に係る経費の支払い(口座引き落としを含む)を完了させることとされています。第18回の実施期限は2027年2月26日(金)、第19回は2027年6月30日(水)です。
| 補助事業を終える時期 | 終了時点の熊本の地域別最低賃金 | 終了時点に必要な時給 |
|---|---|---|
| 2026年11月30日まで | 1,034円 | 申請時+50円と1,034円の高いほう |
| 2026年12月1日以降 | 1,092円 | 申請時+50円と1,092円の高いほう |
第18回・第19回とも実施期限は12月1日より後なので、期限いっぱいまで補助事業を続ける場合は、1,092円と比べることになります。
なお、実績報告では、補助事業の終了時点における直近1か月分の賃金台帳の写しを出し、その事業場内最低賃金が申請時より+50円以上かを事務局が確かめます(第18回の手引き)。終了日が12月の初めで、直近1か月の賃金台帳がまだ改定前の期間の分になる場合の扱いは、手引きにはっきりとは書かれていません。当法人では、12月1日以降に補助事業を終えるときは、終了日の前の賃金計算期間から1,092円以上にしておき、終了時点の直近1か月分の賃金台帳に1,092円以上が出ている状態で報告することをおすすめしています。
申請時の時給ごとの、上げる額の例

12月1日以降に補助事業を終える場合を、申請時の事業場内最低賃金ごとに並べると、次のようになります。
| 申請時の事業場内最低賃金 | 申請時+50円 | 終了時点に必要な時給 | 申請時からの上げ幅 |
|---|---|---|---|
| 1,034円 | 1,084円 | 1,092円 | 58円 |
| 1,042円 | 1,092円 | 1,092円 | 50円 |
| 1,060円 | 1,110円 | 1,110円 | 50円 |
申請時の事業場内最低賃金が1,042円より低い場合は、1,092円のほうが高くなるので、50円より多く上げることになります。1,042円以上の場合は、申請時+50円が1,092円以上になるので、50円の上げ幅で足ります。
月給の人は、時間あたりの額に直して比べます。公募要領の別紙「参考資料」は、月給制の時間換算額を、直近の給与支払時における月給(基本給・役職手当・職務手当などで、時間外手当・通勤手当・家族手当・賞与などや固定残業手当は入れない)を1か月平均所定労働時間数で割って出すとしています。1か月平均所定労働時間数は「(365日-1年の休日合計日数)×1日の所定労働時間数÷12か月」です。月給の人は、時給の人よりも、どれだけ上げれば足りるかが見えにくいので、年間休日と所定労働時間から先に計算しておきます。
第20回の賃金引上げ特例も、地域別最低賃金を下回れない

第20回の賃金引上げ特例は、事業場内最低賃金の+50円ではなく、従業員1人あたり給与支給総額を増やす仕組みに変わりました。ただし、第20回の公募要領も、補助事業実施期限日を終点とした連続する12か月とその前年同月の12か月において、支給している事業場内最低賃金が地域別最低賃金以上である必要があるとしています。第20回の仕組みは「【熊本】持続化補助金 第20回の賃金引上げ特例は何が変わった?3%と報告時期」で説明しています。
要件を外すと、補助金の全体が出ない

第18回・第19回の手引きは、賃金引上げ特例の適用を受けている場合、通常枠や賃金引上げ特例の要件を1つでも満たさないと補助金は交付されず、特例による上乗せ部分だけでなく全体が交付対象外になるとしています。さらに、賃金引上げ特例で採択されたのに申請した賃上げ要件を達成できなかった場合は、交付規程の様式第14で未達が報告されてから18か月の間、中小企業庁が所管する補助金に申請するとき、正当な理由が認められない限り大幅に減点される、とも書いています。
申請のときに渡された資料や、前に計算した必達の額が「申請時+50円」だけで書かれている場合は、12月1日以降に終える予定なら、1,092円と比べて計算し直してください。当法人では、補助事業の終了予定日と、従業員ごとの直近の時給・月給を並べて、終了時点に必要な額を出し直しています。
よくある質問
1,092円ちょうどで要件を満たしますか?
満たします。手引きは、事業場内最低賃金が地域別最低賃金「以上」であることを求めているので、1,092円ちょうどで足ります。申請時+50円の要件も「以上」です。
補助事業は11月中に終わり、実績報告を12月に出す場合は、どちらの額で見ますか?
手引きが比べる時点として書いているのは「補助事業の終了時点」なので、11月中に取組の終了と経費の支払いの両方を終えていれば、終了時点の地域別最低賃金は1,034円です。ただし、12月1日からは、補助金とは関係なく、減額の特例許可を受けた人などを除き、最低賃金法により1,092円以上の賃金を支払う必要があります。
最低賃金の減額の特例許可を受けている従業員も、比べる対象に入りますか?
入りません。第19回の手引き・公募要領は、地域別最低賃金以上かどうかを見るときに、最低賃金法第7条にもとづく減額の特例許可を受けた従業員を除くとしています。よくあるご質問も、特例許可制度の適用を受けた従業員は、賃金引上げ特例の要件の対象にならないと答えています(第18回 A6-5・第19回 A6-4)。
申請時+50円がすでに1,092円を超えていれば、何も変わりませんか?
変わりません。たとえば申請時の事業場内最低賃金が1,060円なら、申請時+50円の1,110円が1,092円より高いので、必要な時給は1,110円のままです。
出典・参考
- 小規模事業者持続化補助金 第18回 補助事業の手引き(第2版)
- 同 第19回 補助事業の手引き(第3版)
- 同 第18回公募 公募要領(第4版・商工会議所地区)
- 同 第19回公募 公募要領(第6版・商工会議所地区)
- 同 第18回 参考資料
- 同 第19回 参考資料
- 同 第18回 申請時によくあるご質問
- 同 第19回 申請時によくあるご質問
- 同 第20回公募 公募要領(第9版・商工会議所地区)
- 熊本県最低賃金の改正について(令和8年度 時間額1,092円)(熊本労働局)
- 熊本県最低賃金の改正について(令和7年度 時間額1,034円)(熊本労働局)
- 令和8年度地域別最低賃金の全国一覧(厚生労働省)
- 最低賃金法(e-Gov法令検索)…第4条・第7条・第14条
まとめ
持続化補助金の第18回・第19回で賃金引上げ特例を使っている場合、補助事業の終了時点に必要な時給は、「申請時の事業場内最低賃金+50円」と「終了時点の地域別最低賃金」の高いほうです。熊本県の地域別最低賃金は2026年12月1日から1,092円なので、12月1日以降に補助事業を終えるなら、1,092円以上にしておくのが安全です。
見るのは実績報告の日ではなく、取組の終了と経費の支払いを終えた補助事業の終了時点です。要件を外すと補助金の全体が出ないので、終了予定日と従業員ごとの時給を並べて、早めに必要な額を出し直しておくことをおすすめします。
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ノーサイド行政書士法人は、熊本の補助金申請を支援している行政書士法人です(経済産業省の認定経営革新等支援機関)。持続化補助金の賃金引上げ特例で、終了時点に必要な時給の計算から、実績報告に付ける賃金台帳の確認まで、一緒に進めます。
制度の概要と当法人のサポートは「小規模事業者持続化補助金」のページに、料金は「サービス・料金」のページにまとめています。
